012




授業は爆発したりしなかったりを繰り返しながら順調に進んでいた。思った通りリボーンの後ろは安全だけれども、ツナは既にボロボロである。なんてスパルタ。やっぱり私には合わないよマフィアは。

次の問題はなんだろうとリボーンの手元を覗き込んだ時、ツナが大声を上げた。

「んなっ!!?」

思わず顔を上げツナを見ると、窓の外を見ているようだ。その視線に習い、私も窓の外を見てみる。

「んんっ!?」

そこには隣の家の木の上からこちらに銃口を向けている小さい男の子がいたのだ。もしかしてあの子もリボーンと同じ赤ん坊の殺し屋!?

「んじゃ、今のおさらいするぞ」

当の本人は気付いてるのか気付いていないのかガン無視なんだけど。ツナは授業どころじゃないその光景に、リボーンに必死に声をかけている。リボーンは教科書から顔を上げようともしない。

「死ね、リボーン!それ!!」

木の上にいる牛っぽい格好をした男の子が引き金を引く。私は反射的にリボーンの後ろに身を縮込ませ、目を閉じる。

しかし、銃声はなかった。ゆっくり顔を上げ、外を確認してみると男の子は銃を片手に首を傾げている。なぜか分からないけれど撃てないらしい。よかった……助かった。

その時、男の子が乗る木の枝がミシミシと音を立てる。嫌な予感しかしない……。

「危ない!」

私が声を上げるのと同じタイミングで枝は折れ、男の子が視界から消えてしまった。窓の下からは落下した音と男の子の悲痛な声が聞こえる。き、気になる……。しかしリボーンは相変わらず無反応で私は腰を下ろした。リボーンがこの態度なら大丈夫だと思うけど…。

しばらく勉強を続けていると、階段をかけ上がる音がする。立て続けて嫌な予感。

「久しぶりだなリボーン!!オレっちだよ!ランボだよ!!!」

嫌な予感的中。勉強中のツナの部屋に飛び込んで来たのは先ほどの男の子だった。ランボというらしいけど、近くで見れば見るほど牛っぽい。

しかしリボーンは変わらず無視。淡々と授業を続けている。

そんなリボーンにムカついたのかランボはナイフを手に彼に飛びかかる。私は被害を被る前にリボーンの後ろから離れた。

「ぴゃん」

しかし、ランボは瞬殺だ。
リボーンに片手でいなされ、壁に投げつけられてしまった。痛そう…。ツナは目を丸くしてその異様な光景を見ている。

「おーいて………何かにつまずいちまったみたいだ……」

ランボはよろよろと身体を持ち上げ、こちらに振り返る。鼻血が出てるしおでこは赤くなってるし痛々しい…。でも関わりたくない。

大声で笑いながら自己紹介を始めたけれど無視でいいんだよね…。

「胡桃子ちゃーん」

無視を決め込んでリボーンの授業に集中しようとした時、一階から名前を呼ばれた。きっと奈々さんだ。「ちょっと来てくれない?」と続くのでリボーンを見ると、頷かれた。行っていいってことだろう。私はそそくさと部屋を出て一階に降りる。
そこにはエプロンをつけた奈々さんが立っていた。

「胡桃子ちゃん、ご飯食べてかない?」
「え?いいんですか?」
「ええ!大勢で食べた方が楽しいわ!」

とても有難い申し出だ。10時にリボーンに呼ばれたことを考慮して昼ご飯の時間には家に帰れないだろうと思い、お母さんには昼ご飯はいらないと言ってあった。どこかで外食するかコンビニで食料調達するつもりだったからとても有難い。

「あの、迷惑でなければ頂きたいです」
「迷惑じゃないわ!ゆっくりしていってね!」

明るい笑顔に心が癒される。特にさっきの光景を目にしてからだと余計に。
呼んでしまってごめんなさいねぇ と言う奈々さんに大丈夫ですよ と返し、ツナの部屋に戻ろうとすると爆音がした。

「あら、何かしら」

と奈々さんは首を傾げるけど、私は気が気でない。またランボが何かしたのかな…。

「ちょっと見てくるわね」

奈々さんはそう言って外に出てしまう。私は廊下でただ一人、奈々さんが帰ってくるのを待っていた。

少しだけ時間がたって、玄関の扉が開く。そこには奈々さんとボロボロのランボ。奈々さん連れてきちゃったんだ…。

「リボーン君のお友達みたいなんだけど喧嘩しちゃったみたいで…」

奈々さんは苦笑しているが、喧嘩ではないのは明白。というかリボーンの一方的な攻撃だ。いや、ランボの自爆か。とにかく、喧嘩とかそんな可愛いものではない。しかしそんなことも言えず、私はそうですねと返答した。

「よ、よしよし…」

とりあえず泣き止まないランボの頭を撫でてみる。するとぎゅーっと抱き着かれてしまった。母性本能なのだろうか、無下にできない…。奈々さんは二階に向かってツナを呼んでいるようだ。



一階に降りてきたツナはランボをあやすために一旦外に出てくれた。私は奈々さんとキッチンに立っている。ただご馳走になるのも嫌だったので手伝うことにしたのだ。

「ありがとうね胡桃子ちゃん」
「気にしないでください。私が手伝いたかったので」
「あらあら。胡桃子ちゃんいいお嫁さんになるわ」
「あはは。貰い手がいたらいいんですけど」

談笑しながら料理をしているとリボーンが一階に降りてきた。そしてソファに座り、テレビを見始める。お昼のニュースを観る赤ん坊は異様でしかない。ただの赤ん坊じゃないと分かっていても、だ。

「よし、できたわ」

奈々さんが作ってくださったのはパスタだ。私は付け合わせのサラダを皿に盛った。
パスタの皿を机に並べていると玄関の扉が開く音がする。そのままリビングの扉を開けて入ってきたのはツナと泣き止んだランボだ。

このメンバーで昼ご飯って大丈夫なのかな?