王子と守護


「ベルセンパーイ」

くそムカつくカエル頭のカワイクねー後輩に声をかけられる。
なんでこんなやつの面倒をオレが見なきゃならねぇんだ。オレ、もうぺーぺーじゃねぇし。
つーかもっとグズなヤツとかいんだろ。

「なんだようるせーな、フラン」
「うるさいはないですよー。ミーは名前を呼んだだけですー」

いちいちムカつく話し方だなこいつ。
早く死んでくれねぇかな。

「んで?なんだよ、早くしゃべれよ、ししっ」
「チャーラって誰ですか?」

いきなりフランの口からチャーラの名前が出て驚く。言ってねぇはずだ、オレは。
ボスが言ったとも思えねー。なら誰だ。作戦隊長だって名前を出すとも思えねーし。レヴィはそもそもチャーラが嫌いだからな。つーことは……?

「オイ、誰から聞いた」
「ルッスーリアセンパイでーす」

やっぱな!
あんのくそオカマ…!!!ぜってー殺す!!
フランには言うなっつったのに簡単に名前だしやがって。

「ねーねー、センパーイ誰なんですかねーねー」
「うるせーよ」
「センパーイ」
「………」
「むー。じゃあもういいです、屋敷中探しますー」
「おい、待て」

こいつとチャーラを会わせるのは阻止しねーと。フランに会わせるのだけは絶対嫌だ。断固拒否。

「ベルセンパイ、教えてくれるんですか?」
「仕方ねーし」
「……意外ですー」

フランが小さく何かを言うから、オレが何を言ったと聞き返すと、こいつはぶんぶんと頭を振る。でっかいカエル頭振るんじゃねー。当たるだろクソガエルが。

「チャーラはオレの所有物だし、うししし♪」
「へー、チャーラサンは所有物なんですかー」

ん?
なんだ?
すげー引っ掛かる言い方…。

もしかしてこいつ。

「お前、ほんとはもうチャーラに会ってんだろ」
「流石センパーイ」

ごめーとー と気の抜けた声と共にフランの姿が変化する。くそ、幻覚だとは分かるが意識は完全に支配される。

フランの姿は見間違えることはねー、チャーラのものだ。

「ベル」

くっそムカつくムカつく。
なにフランなんかに姿パクられてんだよこいつ。
バカにされてるなんてのは分かる。こいつがフランだってのも分かる。
それでもどうしようもないのは惚れた弱味だ。

「おい、フラン、今すぐこの馬鹿げた幻覚解けよ」
「解かない…」

しゃべり方まで真似しやがって。

「なら、これは知ってんのか?」

オレはチャーラの腕にナイフを突き刺す。

「いたっ」

その言葉をスイッチに意識の支配が解かれる。やっぱな、フランは知らねぇみたいだ。

「信じられないですー」

幻覚が解け、むすっとしたカエル頭が顔を出す。

「刺すなんて」

フランはオレのナイフを腕から抜き去ると、ぺいっと捨てやがった。許さねぇ。けどまあ、それはまた今度だ。

「フランは知らねぇだろーけど、チャーラはくそ自虐ドM女なんだよバーカ」

フランはあからさまに表情を歪めた。痛みを感じない体質とは言わねぇ。そんなの口の軽いフランなんかに言って広められたらたまんねーよ。
隊員の中からあいつを強姦するヤツが出てきても困るからさ。
オレが殺すヤツらが増えてめんどくせーし。絶対に作戦隊長に斬られる。隊員減らすなってな。

ヴァリアーでチャーラのことを思ってんのはオレぐらいだ。
だから、このオレが守んなきゃ、だろ?ししし♪

「ふーん。変なセンパイ。あ、いつものことか」
「死ね」

<< >>