王子と出会い


小さい頃からこと殺しに関してオレは天才だった。
一国の王子として生まれようが、関係ない。
血とか、家系とか、そんなのほんとにどーでもよくて、目障りなやつは兄貴であろーと殺した。

オレはじっとなんてしてられなかった。
これは神に与えられた逸物だ。
たくさんある逸物の一つ。
それが殺しの才能。
オレはこれに関して天才で、だからこそヴァリアーに入隊したんだ。

ヴァリアーに入隊したオレは2年という圧倒的速度で幹部になり、幹部になったその日にボスに呼ばれた。

どんな殺しを頼まれるかとワクワクしているオレにボスは言う。

「お前はこいつと話してろ。仕事だ」

ボスがオレの前に差し出したのは小さい、オレと余り年が変わらないであろう女の子だ。
突然のことに呆気にとられていると、女の子は不器用に微笑み、腰を曲げる。

「はじめ、まして、XANXUSお兄様の妹のチャーラです…」

辿々しく紡ぐその言葉に声が出ない。
こ、こんなちんちくりんがボスの妹かよ!!

つーことは、ボンゴレ九代目のご息女、ボンゴレのお姫様ってわけだ。
マフィアのガキになんか見えねーぐらい純粋そうじゃん。何も知らずに生きてきたんだろーなー。殺しも血も、知らずに。しし。

ってか、仕事って…!!
理由を聞こうとボスに視線を向けるが、彼は既にソファで夢の中。何も言えず思わずため息が出た。

「ってことで仕方ないから…」

と姫に目を向けると、彼女は部屋にあるもう一つのソファに座り本を読み始めていた。
オレは無視かよ。
仕事とか言われたオレの気持ち考えろってのー。

ムカついたから姫に向かってナイフを投げた。
マフィアのガキならこんなナイフぐらい避けれんだろーと高を括っていると、その予想は大外れ。

「っ……おい!!」

姫はそこから少しも動かず、ナイフは彼女の肩に刺さる。
正直少しでも動いたら射線上から外れるとこを狙ったのに、なんできっちり刺さってんだよ…!!

慌てて駆け寄り、ナイフを抜き去る。血が溢れていた。姫は少しだけ目を見開いて傷口を見ている。
鋭すぎて痛みを感じないのか?それとも気が動転して……。

つーか、何はともあれマフィアの姫にナイフを刺しちまった。なんと言えば黙っていてくれんだろーか。

思考をフル回転させるオレの脳天に、突如降り注いだのは姫の言葉。

「血が出てるね」

予想だにしていなかった台詞に返す言葉が見つからない。
てか、「血が出てるね」って当たり前すぎだろ。どうなってんだ。

彼女は凝視するオレに気付いたのか、また不器用に微笑む。
その瞬間、オレは彼女が化け物なんだと簡潔に理解した。

<< >>