「ディーオ」

今日は11月6日。私と同じ連合の軍人。シグナスの乗組員、隼鷹・ディオ・ウェインバーグの誕生日だ。
彼の誕生日は、一週間ほど前に彼のプロフィールを見る機会があり、そこで知った。もしあの時見ていなかったら多分誕生日を無視していただろう。偶然に救われたのだ。

私はディオを祝おうと、彼の部屋にやって来た。扉を開け、中を覗くが、誰もいない。
どこに行ってしまったのだろう。
私は一通り辺りを見渡すが、案の定誰もいない。

「んー。探してみよう」

一度呟き、私はシグナス内を探索することにした。
宛もない捜索だが、案外簡単に見つけられたらいいなー、なんて気楽に考えながら歩き出す。

「あ」

案外簡単に見つかった。
ディオは私の部屋の前に立っていたのだ。とりあえず名前を呼べば、ディオは慌てたようにこちらを向く。

「お前……」
「何してるの?」

私が問いかけるとディオは別にと呟き、顔をそむけた。
何もなくて私の部屋の前にあのディオが立ってるわけない。

「ディオー」
「なんでもない」
「嘘だよ」
「………」

ディオはむっとしたままなにも言わない。こいつ本当に無口だな。
ムカつくけど、不言実行のやつだしな。口数少なくてもやってのけるやつだから。

「あ、誕生日おめでとう」

問い詰めるのもバカらしくて言いたかったことを言うとディオは双眸を見開いて「ああ」と呟く。そしてそのまま歩き出してしまった。
え、うそ、なにも聞いてないのに。

「ちょっとディオ!?なんかあったんじゃないの!?」

思わず追いかけると彼は振り向かず足を止めた。その顔はどこか不満げだが、いつもの圧迫感はない。

「俺の用は終わった」
「え?用事?終わったって……」
「……なんでもない」
「うそだー!詳しく教えてよ!」

ディオはもう一度なんでもないと強く言い放ち、早足で去ってしまう。
用は終わったって、なにもされてないんだけど。私の部屋の前にいたんだから、私に用があったんだよね。でも、私だってなにもしてない。

いや、一つしたか。
私、ディオの誕生日をお祝いしたんだ。

「え?じゃあ……?」

もしかしてディオは私に誕生日をお祝いしてほしかったの?

その結論にたどり着いたら、嬉しくてむず痒くて、文句の一つでも言ってやろうと、私はまたディオを探し始めた。