「ほい、砂夜」
「ん」

遊斗は砂夜にガリガリくんを投げ渡す。砂夜はそれを受け取り、袋を破いた。

「ほら、行くぞ」
「ん」

砂夜はガリガリくんをしゃくりとかじりながら頷く。
遊斗も自分で買ったガリガリくんの袋を破き、くわえる。

夏の朝は暑い。
アイスは早くも溶け始めていた。したりと滴が垂れる。

「あーつーいーなー」
「うん、暑い」

遊斗はパタパタと自らを扇ぐ。砂夜は必死にアイスを頬張った。
その額に汗が伝う。

今日は夏休み中の登校日だ。
二人は久しぶりの学校に向けて歩いていた。

「なんかこうやって二人で登校するのも懐かしく感じるな」
「そんなに時間はたっていないが?」
「ロマンないのか、砂夜は」
「ロマン?」
「あーはい。結構です」

遊斗は苦笑いを浮かべ、アイスを食べきる。アイス棒には何も刻まれていなかった。

「ちぇー、ハズレか」
「あ、アタリだ」
「うおっ、まじか!?」
「嘘だ」
「笑えねー」
「笑え」
「……真顔で言うなよ」

砂夜は近くのゴミ箱に棒を投げ入れた。それに習って遊斗も棒を投げ入れる。

「あ、遊斗くんと砂夜くんだー」

クラスの女子が二人に声をかけてきた。
遊斗はいつものキラキラ笑顔を浮かべながら久しぶりーと手を振る。 砂夜は胡散臭げに遊斗を一瞥する。

「あー、髪切ったろ?」
「え!?分かった!?」
「うんうん、分かる分かる!短いのもかわいいよなー、お前」
「照れるし!」

女子は赤くなると遊斗の背中をばしんと叩く。遊斗はいった!とわざとらしく痛がった。

「すぐかわいいって言うのやめてよ!」

女子が赤い顔で不満げに言うと、遊斗はなんで?と首を傾げた。女子の方が首を傾げてしまう。

「本当にかわいくないとこんなこと言わねーよ?俺」
「質悪い」

砂夜は遊斗に華麗なローキックをきめる。痛い!遊斗は飛び上がって眉をしかめた。
そんな二人のやり取りなんか目に入ってないように女子は身をよじっていた。
砂夜はそんな様子にため息を吐き、女子に近付いていく。

「あのさ」
「え、あ、砂夜くん…?」
「短いのもかわいいけど、僕は長いのが好きだから、伸ばしてよ。キミ、髪きれいだから絶対に似合うよ」

保証する。砂夜が微笑んで見せればついに女子の顔は真っ赤になった。

「砂夜、たちわるーい」
「は?なにが?」
「ああ、うん、もういいっす」

二人は未だに固まる女子に手を振って通学路をまた歩き始めた。



遊斗×砂夜