「砂夜くん、いっしょにご飯食べよーよ」

給水塔に目掛けて声をかけると、そこから陰が射した。

「今、いく」

少しだけ高めな男の子の声。
紛れもない砂夜くんの声だ。

砂夜くんは給水塔から飛び降りる。かなりの高さがあるが、彼はすたりと綺麗に着地した。伊達に宇宙人やってない。

「お腹、空いた」
「うん、だと思った」

私は砂夜くんに弁当箱を渡す。彼はそれを受けとると微かに笑顔を浮かべた。

「ありがとう、遊菜」
「う、お、おう!」

きれいな笑顔。

思わず変な返事をしてしまった。声、上ずった…。

砂夜くんと話してると調子が狂う。
真顔で恥ずかしいこと言ってくるし、悪気や自覚がないだけどこぞのたらしとなんか比べ物にならないぐらい質が悪い。天然ってこわい。

「僕、遊菜のご飯好きだよ」
「う、うん……ありがとう…」
「いつもありがとう、遊菜」
「い、いきなりなんなの!?」

おかしい。今日の砂夜くんは絶対におかしい。
いつも私が作ってきた弁当を勝手にパクパク食べちゃうくせに。

私は少し震える手で弁当の蓋を開けた。
砂夜くんは私の手元をじーっと見つめてくる。
恥ずかしい…。

「ねぇ、遊菜」
「今度はなに!?」
「あ、ダメ、動かないで」
「はあ!?なんで!?」
「前、向いてていいから」
「……はぁ…はいはい。これでいいんで……しょ……?」

私は思わず持っていた弁当の蓋を落としてしまった。

だってだって!!
砂夜くんが私に抱き着いてきたんだよ!?
ドキドキして息がうまくできない。
ってゆーか!!意味わかんない!!

「さ、砂夜くん!?今日何があったの!?」
「あったよ」
「あったの!?」
「うん……遊菜の側が好きってことに気付いた」
「ぐはっ!!」

砂夜くんの一言一言がナイフみたいに心臓を貫いてくる。
もたない!絶対にもたない!
砂夜くんの腕から逃れようと必死に身をよじるけど、ダメだ、びくともしない。その上、更にきつく抱き締めてきた。

「離したくない…」
「う……うぅ……」
「好きだよ…遊菜……」
「そ、それは……」

どういう意味の好きですか?なんて絶対に聞けなくて、私は唇を噛み締めながらうつむくことしかできなかった。



砂夜×遊菜