「砂夜子ちゃん、一緒に帰ろ?」

いつも通り学校の屋上で寝ている砂夜子ちゃんに声をかける。
砂夜子ちゃん閉じていた瞼を持ち上げ、その瞳に私をとらえた。

「遊菜…?」

眠たげに名前を呼ばれ、私は頷く。
砂夜子ちゃんはいつも給水タンクにもたれながら寝ているから、その陰で表情が読み辛い。
でも、きっと眠いのだけは分かった。

「学校終わったよ。十代はいつもみたいに補習だから、先帰っちゃお」
「ああ、分かった……」

砂夜子ちゃんはむくりと身体を持ち上げ、陰から這い出てくる。しかし、日差しが彼女の顔に当たった瞬間、砂夜子ちゃんはあからさまに表情を歪め日陰に戻っていった。

「砂夜子ちゃん?」
「熱い。もう少し日が暮れるまで出たくない」
「それなら図書館行こうよ。クーラー効いてて涼しいよ」
「クーラー……」

彼女は溶けてしまいそうな声で呟き、再び陰から出てきた。やっぱりクーラーの欲には勝てないみたい。

「うぅ……熱い」
「わっ」

砂夜子ちゃんの身体は日向に出た瞬間、ぐらりと揺れ、私にもたれかかってくる。私はそれをしっかり抱き止め、背中をポンポンと叩いた。

「ほらほら、しっかり立って」
「うぅう……遊菜の鬼ぃ……」

うわ言の様に砂夜子ちゃんは言う。このままじゃ一向に立ってくれそうにない。
私は仕方ない、と、彼女の身体を抱き上げた。
普通に抱き上げると辛いから、横抱きだ。

「っ!!遊菜!?」
「仕方ないお姫様だなー」
「や、やめろ遊菜!重いだろ!!」
「軽いよー!ちゃんと食べてますかぁ?」
「た、食べてる!食べてるから!」

砂夜子ちゃんは本当に軽い。
私でも楽に持ち上げれるんだもん、相当だ。
人間じゃないからかな?
これだけ軽いと、熱さに弱いのも、華奢な身体も理解できる。

私、体重は結構あるから、砂夜子ちゃんみたいな細い身体が羨ましい。

「遊菜…!!」

砂夜子ちゃんは諦めたのか私の首に腕を回す。
それが少しだけ震えていて、可愛い。

「砂夜子ちゃん、お姫様だっこはじめて?」
「話には聞いていたが…」
「つまりはじめてなんだ」

それが嬉しくて、私は階段を結構なスピードで駆け降りてしまった。
砂夜子ちゃんの肩がビクリと揺れる。

「怖い?」

私が問うと砂夜子ちゃんは必死に頷く。それがまた可愛くて、私はわざとスキップしながら廊下を進んだ。



遊菜×砂夜子