緑間真太郎
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「真ちゃーん」
「真ちゃーん!!」
私と和成は通学路を歩く真ちゃんの背中を見つけて駆け出す。タイミングは一緒。流石双子。いつもこんな感じだ。
「な、なんなのだよ!」
私は真ちゃんに飛び付き、和成は真ちゃんの背中をばしんと叩く。二つの力に押された真ちゃんは哀れなほどバランスを崩した。
「こんなとこで真ちゃんに会えるとか奇跡だー!」
「いつもは俺たち部活で朝早いからねー」
「それにチャリアカーしてるからねー」
「今日会えたってのも奇跡だよなー」
「ふふふー嬉しいなー」
「交互にしゃべるな分からなくなるだろう!!」
私たちが畳み掛けるように喋り続ければ、真ちゃんは頭を抱えながら突っ込みを入れてくる。
私と和成は笑い声を上げながら彼の肩を叩いた。真ちゃんは眉根を寄せて眼鏡のフレームをかちゃりと持ち上げる。
「で、何の用なのだよ」
「あーそうそう」
和成は私を見て、ほら と「それ」を促す。私はこくりと頷いて鞄から「それ」を取り出した。
「真ちゃん」
誕生日おめでとう!
アイコンタクトも掛け声も無しに声を重ねる。すると真ちゃんは至極驚いたようで、今までしきりに動かしていた足を止めた。
彼に差し出すのはもちろんプレゼント。和成が考えて私が作って、和成が包装した。まさしく私たち二人からのプレゼント。
真ちゃんはそれを受け取ると少しだけ震える手で包装を開けだした。
私と和成は思わずニヤニヤしてしまう。だって、頑張って用意したんだもん。喜んでくれるって信じてるから。
「これ、は……」
「もちろん、手作りだからね!!」
私たちのプレゼントは手作りのカップケーキ。最初は普通のケーキにしようと思ったんだけど、保存しにくいっていう面が問題になってカップケーキにシフトした。
七夕にちなんで星の形にしたチョコチップが入っていたりする。
「…………」
「どうどう?」
「すごいっしょ!名前、すげーお菓子作るの上手いから!絶対美味しいから!」
「ねぇねぇ、食べて食べてねぇねぇ」
「味見してみたけどすっげぇ美味しいんだよ!損しないぜ〜」
「美味しいよー」
「旨いからさぁ」
「ちょっとうるさいのだよ!!」
二人で真ちゃんの周りをちょこまか動きながら声をかけ続けると、真ちゃんは声を荒げた。
「ふん、でもまぁ……ありがたく受け取っておこう」
真ちゃんは顔を背けると、カップケーキを一口かじった。
「……旨いのだよ」
やったー!
私と和成は二人で飛び上がりながら喜ぶ。すると真っ赤な顔の真ちゃんが早く行くぞと先を急いでしまったから、私たちはその背中を追いかけた。
(今夜は七夕パーティしようね!)
(なんなのだよ、それは)
(やろうやろう!絶対楽しいっしょ!)
(……もう好きにしろ)
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