15万リクエスト | ナノ

VS悪戯娘


「誰だこんなことをしたのは…!!」

ミザエルは授業中にも関わらず、がたりと立ち上がった。
クラスメイトは何事だとそちらに視線をやる。
ミザエルは白く綺麗な肌に青筋を浮き上がらせ、一点を忌まわしげに見つめていた。

「おい郁…!!」

ミザエルが見ているのは窓側後ろから二番目の席に座る郁ちゃん。
郁ちゃんはニヤニヤを隠せないのか、少しだけひきつった真顔をミザエルに見せる。

「なによ。今授業中なんだけど」
「その授業の妨害をしたのは貴様だろう!!」
「え?何が?」

ああ、多分郁ちゃんだ。

何が起きたのかも、なんでそこまで怒ってるのかなんて分からないけど、それだけははっきり言える。
だって、郁ちゃんの目 すごく笑っている。

きっとミザエルはまた郁ちゃんの悪戯の餌食になったんだろうなー。
ご愁傷さま。

「………郁」

少しだけ静まり返った教室に落ち着いた声が響いた。

声を発したのはドルべだ。
ドルべはミザエルのように立ち上がるまではしないが、遠い目をしながら自らの筆箱を見つめている。

「郁…!!!!」

次に声を上げたのはアリトだった。
郁ちゃん、どれだけ悪戯してるの。
チラリとベクターに視線をやると、彼は肩を上げた。どうやらベクターは悪戯されてないみたい。

授業を担当していた先生は既に呆れて怒る気も失せているのか、どこか見守る体制だ。
まぁ、日常茶飯時にこんなことやってたら慣れますよね。

じーと先生を見ていたら目があったため、軽く笑っておいた。
「どうにもなりません」という思いを込めながら。

「私のペンの中身を入れ替えたのは郁だろ!」
「…鉛筆を全部丸くしたな?」
「カドケシの角を全滅させるとかお前性格悪すぎ…!!」
「あははは!! ちょっとした悪戯心じゃんかー」

立て続けて三人に文句を言われても、郁ちゃんはいつものペースを乱さない。

それにしても地味だけどイラつく悪戯をよくもまぁ実行したものだ。それに、準備するのも時間がかかるだろうに。
郁ちゃんの悪戯に対する思いは計り知れないものを感じる。
あといつやったんだろう。筆箱なんてそんなに目を離さないだろうに。

郁ちゃんは忍かなんかなの?

「アキちゃーん」
「え?どうしたの?」

郁ちゃんはパタパタをかけてくると私に抱き着いてきた。
ぎゅーぎゅーしてくる郁ちゃんは可愛いからズルい。こうしてみんな悪戯の対象にされていくんだ。

「ちょっとした悪戯なのにみんなすごく怒ってる」
「郁ちゃん」
「なぁに?」
「反省する気無いでしょ」
「……………えへ☆」

郁ちゃんは無邪気に星を飛ばしながら笑う。

でも一つだけ言うとね、カドケシの角を全滅させるのはダメ。
それは私も怒る。

「郁にはなに言っても無駄だろ」

ベクターは淡々と言い放って、板書を取り始めた。真面目め。
でも言ってることは大正解。郁ちゃんにはなに言っても無駄。

と、いいますか、悪戯しない郁ちゃんなんて郁ちゃんじゃない。悪戯をしてこそ郁ちゃん。
ミザエルもドルべもアリトだって、郁ちゃんの悪戯が無くなったら寂しくなるに決まっているよ。私は遠慮しときます。

「ほらほら、みんな座って。授業授業」

私が解散の意図を込めながら手を叩くと郁ちゃんは席に戻り、三人は渋々前を向いた。
先生はそれは深い深いため息を吐いて、授業を再開させる。

これが私たちの日常だ。



……………………………………

リクエスト第五段は蛍火遥夏様リクエストの「小ネタコラボ学校ネタ」でした!!

郁ちゃん偽物かもしれません!! ごめんなさい!!
そして悪戯が古典的www
地味だけどムカつく悪戯をテーマに考えさせてもらいました!
ムカつきますよね!?
ちなみにドルべは鉛筆派なのでシャーペンは持ってません(笑)

リクエストありがとうございました!