15万リクエスト | ナノ

だって男の子


私は今ベクターと同棲している。
行き場のないベクターを私が保護している形なんだけど、まぁ、恋人同士だし同棲と言ってしまっても大丈夫だろう。

今日は私に用事があって朝早くから家を開けなくちゃならなかったんだけど、ベクターってば意外にも大人しくお留守番を請け負ってくれた。
あいつにもいいとこがあるなぁ、と軽く関心。

それがすごく嬉しくて私は早めに用事を終わらせて帰ってきた。わけなんだけど。

「ベクター、sit down」

ええ、怒ってますとも。

ベクターは諦めたような顔付きで床に座る。私は仁王立ちで彼を見下ろした。

手には先ほどまで彼が読んでいた………い、如何わしい……その……本だ。
持つのも嫌だ。汚らわしい…。

表紙にはぼーんでばーんな水着の女性。
……ええ、私にはありませんとも。
こんなのこんなの幻想よ!偽物よ!

中身は……18禁じゃない!

あり得ないあり得ないあり得ない!
大人しくしていたのは全部こういう本を読むためだったなんて!

「ベクターのバカバカバカ!変態!」
「はぁ?俺だって男だぞ?それに、んなもん変態の枠にも入んないだろ。ノーマルもんだ」
「の、ののノーマルって何よ!!こんな、こんな、………っ普通じゃありえない!」

私は表紙の女性の ぼーんな部分を指差す。自分で指し示しておいてなんだけど、ダメージが大きい……。

「いやいや、名前が無さすぎるだけだろぉ?」

ベクターはムカつくにやけ顔で私の胸部を指差す。私は手にしていた本を投げ捨て、胸部を両の手で押さえた。
……掌で隠せる大きさってことを露見させただけじゃないか…。

ベクターも……ある方が好きなのかなぁ……。
む、胸はその…確かにないかもしれないけど、か、彼女なんだし…もっとなにか、あってもいいじゃない。

「ま?胸なんて興味ないけどなぁ」
「え……?」

いつの間にか立ち上がっていたベクターに頭を撫でられる。

「でもベクター…さっきのは……」
「胸じゃなくて本番見てるから」
「うわぁああああ!!!!!」

手当たり次第ものを投げつける。
そうでもしないとやってられない。

私が、私がいるじゃない!?
私はベクターの彼女じゃないの!?
なんで他の女の……あの、えと……そう!アレを見て喜んでるの!?

「信じられないバカバカバカバカぁああ!」
「いてぇよバカ!!」
「バカはベクターだよバカぁ!!」
「バカは………お前だろ!」

目覚まし時計を投げようとしていた手をベクターに掴まれる。
涙で滲む視界にベクターが映る。
真剣な顔、してる。

「じゃあお前、ヤらせてくれんのかよ…?」
「へ……?あ、それは…」

嫌だ。
ベクターが嫌なわけじゃないけど。
まだ、怖い。

彼がため息を吐いたのを見て、思わず視線が下がる。

ベクターは私の手を離すと、また頭を撫でてきた。優しい手つき、暖かい……。

「ああいうので鎮めねぇとお前を犯しそうで怖いんだよ」

大事にしたいから と、その言葉が耳を掠め、脳が噛み締めた。

そっか……そうなんだ。
私を大事にしたいから…なんだ。

理由が分かってしまえばすごい安心感に襲われる。
ベクターは私じゃ嫌ってことじゃないんだね。
それが知れただけで十分。

「ねぇ、ベクター……」
「あ?」
「まだ、無理だけど、頑張るから。その時はもうこんな本読まないでね」
「おお、その時はお前をぐちゃぐちゃにしてやるよォ」
「うわぁああああああしねぇええ!!!」

ねぇ!?
今かなりしんみりしてたよね?
してたよね!?

私の決意を台無しにして!
いつか、私じゃないと満足できないようにしてやるんだから!!



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15万リクエストラストは小雪様リクエストの「エロ本読んでたベクターと喧嘩」です!

ありがちな感じで終わらせたくなかったので、ちょっとギャグ分多目になりました(笑)

リクエストありがとうございました!