まほうのことば
ヌメロンコードで人間になったベクターと私はそれなりのいざこざを経て、付き合うという形に落ち着いた。
でもベクターったら、全然好きって言ってくれなくて正直悩んでる。もしかして私、魅力ないのかな…?
「ねぇーベクター!」
ベッドの上にいるはずのベクターに声をかけてみる。しかし返答はない。なんでだろうと首を巡らせると、彼はベッドの上で穏やかな寝息をたてていた。
「寝てる……」
一瞬だけつまらないなーと思ったが、いいことを思い付いた。私はベクターの耳元に口を寄せ、そっと囁く。
「ベクターは私が好き」
その言葉にベクターは身をよじる。言ってくれるまでやめないんだから。私はもっとはっきりと言葉にした。
「ベ、ク、ターは、わ、た、し、の、こ、と、が、す、き」
「んっ……おれ、は…」
反応がある!
なかなかいい考えじゃない。これならベクターだって私に好きって言ってくれるはず。
「ベクターは私が、すーき」
「おれ、は……名前が……」
よし!あと少しだ!
もう少しでベクターは私を好きって言ってくれる!
ちょっと強引かもしれないけれど、ベクターも寝てるし私が満足できたらそれでいいんだもん。
「ベクターはー……」
「それで満足できるなんて安い女だなぁ…お前」
「ひゃっ!!」
至近距離にあったベクターの目が開いた。私は思わず飛び退いてしまう。
ちょっと待って、いつから起きていたわけ!?
「言っとくけどな、最初から起きてたぜぇ…?」
「なっ」
にやり、ベクターの口角が意地悪げに上がる。何か文句を言ってやりたいのに、上手く言葉にならないし、多分言えても言い訳にしかならない。
「おいおい、名前ちゃんは寝てる俺に好きって言われただけで満足なのかよ」
「う、うるさいなっ!私の勝手じゃな…んぐっ」
「ちょっと黙れ……よ」
ベクターの紫色の瞳が私を射抜く。荒々しい口付けは捕食されているような気分になる。でも嫌な気分じゃない。
「仕方ねぇから言ってやろうか?起きてる俺がなぁ!ヒャハハ!」
「ずっと起きてたくせに!!」
「文句言ってんじゃねぇよ……言われたいくせに」
ベクターは私の腕を掴み、易々とベッドに組み敷いた。気付いたらベクターに見下ろされている?
「おいおい、怯えてんじゃねぇか」
また楽しそうに笑い声をあげるベクターだが、何も言い返せない。そのまま私の耳に口を寄せたベクターはそこを優しく噛みながら
「俺は名前が好きだぜ」
と囁いてくる。
甘い痛みと優しい声音に頭の中まで蕩けてしまいそう。私が身震いをすればまたベクターは笑い声をあげた。
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リクエスト第二十二段はももこ様リクエストの「寝ているベクターに悪戯」でしたー
夢主からキスさせれなくてごめんなさい(′・ω・`)
リクエストありがとうございました!