終戦の恋歌
終わった。全ての戦いが。
だからこそ今私の目の前にカイトくんはいるし、触れることだって出来る。
「カ、イト、くん……!!」
私は耐えきれずカイトくんに飛び付いた。
紫色に染められていた世界は、今やもう元の世界に戻っている。
「ああ、ただいま」
いつもはそっけないカイトくんが返事をしてくれた。きっと、私の気持ちを察してくれたんだ。
私はデュエルが出来ない。
だから、見送ることしかできなかった。
無力で役立たずで、この安全な部屋の中でカイトくんの無事を祈ることしか出来ない。
「怖かった……怖かったよ……!!」
たった少し、短い間しか離れていなかったはずなのに、もう何年も会っていなかった時のような気持ち。
カイトくんの存在を感じることができなくて、いつもなら会いに行けばいいだけなのに、それもできなくて。会えなくて。でも泣いてはいけないような気がして、泣くのだけは我慢し、ただ身勝手に無事だけを祈った。
世界は滅んでいいから、私からカイトくんを奪わないでって。
「泣いてるのか?名前…」
「だって、だって、カイトくんが…!!」
きっと私は後悔していたんだ。こんなことになるなら、すぐ言っておけばよかった。
カイトくんが死んでも私は、きっと納得はしたんだ。
彼が望んだ死に場所なのだから。喜んで然るべきなのだ。
でも、後悔がそれすらも受け入れなかった。
私、言ってないもの。
「カイトくん…………私、カイトくんが好きなの」
そう、この告白を。
カイトくんの体はその言葉に揺れた。驚いてる。わかってた。でも、言わなきゃって思ったから。
いつ離れ離れになるか分からない。それを知った今だから、告白に躊躇いはなかった。
言えなくて別れるぐらいなら、少しぐらい強引になっても大丈夫。この恋に後悔だけはしたくないから。
「名前……俺は…」
「いいの…今のカイトくんには…私がそういう対象じゃないってことは分かってるから」
「すまない…」
知ってる。知ってたんだ。
失恋とは違う答え。知ってたんだ。こういう答えが出ることぐらい。知ってたよ。全部。
「名前…俺はきちんと答えを出す」
言って私を抱きしめた腕は力強かった。溢れ出しそうになる涙を必死に食い止める。でも止められなかった涙が頬を濡らした。
「だから、もう少しだけ待っていてくれ」
もう何も答えられなくて、私はカイトくんの腕の中で必死に首を振る。彼の軽く笑む声を聞き、私は確かに存在する幸せに身を委ねた。
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リクエスト第二十弾はミュウ様リクエストの「戦いの後にカイトに告白」でした!
まさかの返事保留にしましたw
楽しんでいただけたら幸いです!
リクエストありがとうございました!