アクアリウムの彗星
「あ、マンタ!」
私がマンタの舞う水槽に向けて走り出すと、真月くんも後ろから着いてきた。
マンタだよ! と指差しながら飛び跳ねると、真月くんは瞳をキラリ輝かせた。
「本当ですね!」
「マンタかわいいよねー!」
マンタは腹の方についている顔(?)がなんとも言えない愛嬌をもっている。あの顔がとてもかわいくて大好きだ。
私と真月くんは泳ぐマンタの腹を見るために、水槽に引っ付いた。
ちょうどその時だ。
「うわっ!」
私たちの視線外にいた他のマンタが、水槽ギリギリを泳いだのだ。至近距離をマンタの顔が過ぎた。
私たちはいきなりのことにビックリして飛び上がる。こんな風に来るなんてちっとも思ってなかったから。
「ビックリしたね…」
「はい、ビックリしました」
私たちは驚いた顔を見せあい、どちらからともなく笑いだした。
今日はクラスメイトの真月くんに誘われて水族館に来ている。
真月くんいわく「デート」らしい。
でもそれを意識したら恥ずかしくなっちゃうから、私は出来るだけ考えないことにした。
真月くんは感受性や表現が豊かだから、一緒に見て回るのが楽しい。
次から次へと様々な水槽を回り、私と楽しもうとしてくれるのが分かるから、私もはめを外しちゃおうって思える。
真月くんは私を素直にしてくれるんだ。
「イルカかわいい!」
水族館のアイドルと言っても過言ではないだろうイルカの水槽に駆け寄る。真月くんも本当だ!と笑った。
「私ね、始めてくるんだ水族館」
「え?本当ですか?」
「うん。海の生物とか大好きなんだけど、機会がなくて…。だから、真月くんが今日、誘ってくれて嬉しい」
「よかったです……」
真月くんが安堵したように笑うのを視線の端で確認して、私はまたイルカを見上げた。
はじめての水族館。すごく楽しい。
多分、側にいるのが真月くんだから、もっともっと楽しい。
ここに来られてよかった。
「いきなりデートに誘ったので、迷惑なんじゃないかって心配してたんです」
真月くんは俯きながら呟く。私は首を巡らせて、真月くんを正面に収めた。
「はじめてのデートだから、すごく緊張したけど……楽しかったよ」
私が言えば真月くんはがばりと頭を上げて、満面の笑みを見せてくれた。
そして私の両手を自分の両手で包み込み、楽しそうに口を開く。
「よかれと思って、またデートに誘っていいですか!?」
一瞬だけ呆気にとられたけれど、私は自分ができる精一杯の笑顔を浮かべて頷いた。
……………………………………
リクエスト第十二段!
キーラ様リクエストの「真月くんクラスメイト主と水族館で初デート」でしたー!
マンタの顔(?)が大好きですwww
リクエストありがとうございました!