15万リクエスト | ナノ

モノポリズム


私の恋人がおかしいのだと気付いたのは、友人の話を聞いてからだ。

普通、彼氏というものは彼女の携帯に登録してある男性のメアドを勝手に消去しないし、彼女に近付く男友達を登校拒否に追い込んだりしないらしい。
私の彼氏はそんなこと、日常的にやっていたのに。
最近なんて、女友達にまで牽制し始めたらしいし、私の親ともなにやら話をしているみたいだ。

私の彼氏、高尾和成くんはよく「名前には俺がいれば十分だよな」と聞いてくることがあった。
私はそれに対して、よく考えもせず頷いていた。
頷く度に和成くんは嬉しそうに笑うから、これが正解なんだと思っていた。
和成くんが笑顔になってくれるのが嬉しかったから。

でも、違うのだと友人は否定する。
それは普通じゃないと。
それは簡単な問いかけじゃないと、私に教えてくれた。

でも、どうしてもそれが理解できなくて和成くんに話せずにいたら、いつの間にかその友人まで学校に来なくなってしまった。
友人がいなくて寂しい学校生活。
和成くんはずっと側にいてくれた。

「泣かないでよ、名前」
「うん…」

和成くんは苦笑しながら私の涙を拭う。
友人に連絡がつかない。
どうしたのだろうか。
元気ならばいいのだけれど、せめて一言くらい欲しい。

「名前はなんで泣いてんの?」
「なんでって、…あの子になにかあったら…そう思うと、涙が止まらないんだもん」
「なんで?」

和成くんはまた首を傾げた。
なんでって、その質問がわからない。
友達なんだよ?
友達がいきなり連絡つかなくなったら、悲しいに決まってるよね?
なのに、…それこそ『なんで』和成くんはそんな…不思議そうに見つめてくるの?

「名前は、あの子が大切なの?」
「う、うん…」
「へぇ……やっぱ、いないほうがいいか、あの子」
「…?なに、言ってるの?」
「だから、名前は俺さえいれば十分なんだから、友達なんていらないでしょ?」
「え……?」

和成くんはにっこり笑って、私の頬を撫でた。

はじめて和成くんが分からないと思った。
今までの和成くんの行動は愛されてるんだと思って理解できたけれど、これは少し違う。
愛とか、もう、そういうレベルの話じゃない。

「名前には、俺だけいればいいんだよ」
「かず、なり、く……?」
「大丈夫。すぐ、寂しいなんて思わなくなるから。大丈夫だから。俺が、いるから。俺だけが、ずっとずっと、名前の側にいるからさ」

ね? 和成くんは無邪気に微笑み、小首を傾げて聞いてくる。
私は頷くことも首を振ることも出来ず、ただただ和成くんの瞳を見つめ続けた。

「ここは、俺だけがいていい場所だもんね?名前」

ちくりと耳を掠める声が、胸に刺さり、また涙が溢れてきた。
和成くんはくすりと笑って、再度涙を拭い始める。

頬に触れる指は、まるで氷のように冷たかった。


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リクエスト第九段は「独占したがる高尾」でした!

ヤンデレ書くの楽しかったです!
久しぶりの高尾が偽物になってないことを願うばかり…

美菜様、素敵なリクエストありがとうございました!