教えてサムライボーイ | ナノ





‖浅葱


日本に行きたいの! お義父さんにそう告げたら、意外にもあっさりと許可してくれた。しかも笑顔で。
果てには日本の素晴らしさまで説かれてしまった。

「まったくもう…」

止めてほしかった訳ではないけれど、もう少し心配するとかあるだろうに。私はまだ14歳なんだよ?一人で海外に行くことを止めないなんて、やっぱりお義父さんは少し変だ。

私は飛行機を降り、空港に降り立った。長旅を終え、日本にやって来たのだ。

胸がドキドキと高鳴る。ここが日本。私の知らない母国。父と母が生まれ、暮らし、愛した国。
ここに、父と母の全てがある!

私は昂る気持ちを抑え、人が溢れかえる空港を出る。
成田国際空港。ここは東京だ。確か、リカルドは東京で待っていると言っていた。ここでリカルドを呼んで、あいつのバイクで静岡まで行くのだ。

静岡県……。ガンプラ工場が存在する、正にガンプラの聖地!ああ、まさかこんなにも早くその地を踏めるなんて!
ガンプラバトルの世界大会もそこで行われる。イタリア大会には何度も出場しているが、世界大会に来るのははじめてだ。いつもテレビ画面で見ていた世界を間近で体験できるのだ。楽しみで仕方ない。

私はそっと手にしたアタッシュケースを撫でる。この中には私の大切なガンプラが入っている。フリーダムガンダムロゼッタとガンダムデスサイズブロッサム。どちらも私と長年を共にしてきた相棒。これで、私はあのサムライボーイと戦いたい。

逸る気持ちは止められない。胸に手をやり、そっと息を吸い込む。
鼓動が落ち着いたのを見計らってから携帯を取り出した。
かけるのはもちろんリカルドだ。

2回のコールの後リカルドの声が聞こえた。

「リカルド!着いたよ!日本!」

自分でも驚いた。予想以上に明るい声が出たのだ。そっか、そっか。私、ワクワクしてるんだ。
携帯越しのリカルドは笑った。

『楽しそうだな!』
「うん!」

楽しいという本音を隠す必要なんて無くて、私は意気揚々と頷いた。

『よし!迎えに行ってやるよ』

その言葉が聞こえ、私が待ってる と返せば通話は切れた。私は携帯をポケットにしまう。

ドキドキドキドキ。
ああ、止まらない。
ガンプラバトルも、日本も、ニルス君も。全てが楽しみで止まらない!

私はこれから起こるだろうことに、期待し胸を高鳴らせた。



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