‖二藍 偶々見ていたガンプラバトル、アメリカ予選の映像。そこに映し出された機体に、私は目を奪われた。 機動戦士ガンダムSEED ASTRAY内での機体、ガンダムアストレイレッドフレームを祖体に、甲冑や鬼を象った盾などを装備した、まるで戦国武将の様な機体。 それは、日本に激しい憧れを抱いている私にとっては、至極素晴らしいものに映った。もともとアストレイレッドフレームが好きだった私には更に輝いて見える。 その機体は圧倒的な機動力で相手を翻弄し、一閃を浴びせる。そして、最後の一打。何が起こっているのかすら分からない。 余りにも早すぎる決着。私はごくりと唾を飲み込んだ。 美しく、かっこいい。あんな機体があったなんて。 私は素早くパソコンを起動させ、アメリカ予選の選手を検索エンジンにかける。 たくさんの人名を流し、流し、隅から隅まで視線をやって見付けた。 「戦国アストレイ頑駄無……」 操縦者の欄に書かれたその名は「ニルス・ニールセン」。まったく知らない名前だ。きっと有名な選手じゃないのだろう。しかし、それにしては強すぎないだろうか。 「彼は……いったい」 今一度テレビに視線を投げるとそこには褐色茶髪の少年が映っていた。年は私と然して変わらないだろう。 少年は袴の様な格好をしており、明らかに浮いている。しかし凛としたその姿は一切他人に侵犯されていない。涼しげな目元や、しゅんっと伸びた背筋が育ちの良さを窺わせた。 日本人の様なその姿に、私は強く惹かれた。もしかしてとテレビにくぎつけになっていると、解説者が言う。 「ニルス・ニールセン選手、新人ながらもアメリカ王者に輝きました!」 ああ、やはりそうか。 私の予感は適中した。彼が戦国アストレイのパイロット、ニルス・ニールセンではないのだろうかと考えていたのだ。 「かっこいい………」 思わず呟いていた自分に苦笑する。我ながら単純だ。まさか自分の日本への憧れがここまでだとは思わなかった。 さあ、早く飛行機を予約しないと。日本に行かなきゃいけない。 ニルス・ニールセン君がアメリカ予選を勝ち抜いたということは、いずれ日本で行われる世界大会本戦に行くということ。それが彼に会うチャンスだ。 私も日本に行く。 彼に会いたい。あの戦国アストレイ頑駄無をこの目で見て、出来れば戦いたい。ああ、彼のような人が決勝に進出すると知っていたのならもっと本気を出せたのに。リカルドにだって負けなかったかもしれない。いやむしろ勝ってたかもしれないのに。 私は直ぐ様荷造りを開始させ、リカルドに日本に行くことを伝えるために携帯を手にした。 back |