![]() ‖今様 私はコックピットが弾けとんだロゼッタを拾い上げる。 あの最後の技は、アメリカ予選でニルス君が見せた技だ。生で見てもやはりよく分からなかった。 弾けとんだコックピット以外、ロゼッタに目立った損傷はない。傷付けないようにしてくれたのだろう。私は本気だったのに、手加減をしてくれたニルス君に負けた。特訓し直し、かな。 「お手合わせ、感謝します」 ニルス君はそう頭を下げる。私もつられて頭を下げた。 「では、僕が勝ったので、撫子の思いを話してください」 ああ、そんな約束もあったっけ。ガンプラバトルに夢中で忘れていた。 思い。ニルス君はそれを話すきっかけを作ってくれた。その行動に報いたい。彼は私のためを思ってバトルをしてくれたのだ。約束を違うことなど出来ない。いや、違いたくない。 彼にはいつでも真っ直ぐにぶつかりたいと思っているのだ。 バトルをする前とした後では何かが決定的に違った。する前はあんなに頑なだった口が、動こうとしている。このバトルを通じて、私はやっぱりニルス君が好きなんだと再確認した。もう、逃げないよ。 「私、ニルス君のことが好きです」 彼の目は、真ん丸に見開いた。そんな顔もするんだ、なんて一人で感心して、私は言葉を続けた。 「まだ出会って日は浅いですが、貴方の優しい人柄に、その日本に対する思いに惹かれました」 そうだったんだ。自分の口から出た言葉に、私は納得した。私はニルス君のそんなところを好きになったんだ。深く考えてなかったから、自然と口が動いた今の今まで知らなかった。 感覚的だと思っていた「好き」にも、ちゃんとした理由があったんだね。 「ニルス君に迷惑をかけてしまうのが怖くて、貴方を避けてしまいました。ごめんなさい。でも、もう逃げません」 ニルス君は一言も発しない。ただただ、そこに立って、私の言葉を聞いてくれている。 「多くは望みません。ただ、貴方のことを好きな存在がいる、ということだけを覚えていてください」 私はニルス君に頭を下げ、部屋を出た。気分はどこか晴れやかだ。彼は何も言わなかった。それで構わない。別に、恋人になりたいとか、結婚したいとか、そんな願望があるわけでもないし。思いを伝えれてよかった。 部屋に向けて足を動かす。心の内にあったモヤモヤは消え失せ、軽い。さーて、部屋に帰ってロゼッタの修復をしなくちゃ。 「ありがとう、ロゼッタ」 私のために戦ってくれた相棒に口付けを落とし、優しく撫でる。貴方がいたから、私は彼に出会えたの。私をガンプラバトルの世界に引き摺り込んでくれてありがとう、ロゼッタ。 back |