![]() ‖金茶 公園から逃げ、人通りの少ない住宅街で私は頭を抱えた。 何であんなことを口走ってたのだろう。絶対に気持ち悪いって思われた。言ってる私が気持ち悪いと思うんだから。 あーあ。折角会えたのに、勿体ないことをしてしまった。こういう時だけばか正直になる自分の口を恨む。 「行こう……」 もう泊まるホテルに向かおうと、私は立ち上がる。しかし、ホテルの場所も、この場所すら分からなくて、私は辺りを見渡してしまった。そうだ、ここは日本なんだ。私は日本人だけど、完全なアウェーである。 「リカルド……」 私はポケットに手を入れ、携帯を探す。リカルドを呼べば連れていってくれるだろう。そう言えば、電源を切っていたのを忘れていた。電話したら怒るだろうか。私はいきなりいなくなって、連絡の手段も断ち切ったのだから。 私は恐る恐る電源を入れる。画面に映った文字に唖然としてしまった。 《不在着信:58件》 《新着メール:69件》 全部リカルドだ。 「怖い……」 どうやら、すごく心配をかけてしまったらしい。その圧倒的な数に少しの間固まっていると、またリカルドからメールが来た。全部同じ内容だ。《今どこにいる》いつもみたいな絵文字が一つもない。《!》や《?》もないから何の感情も見てとれない。これは、本気で心配してる時のリカルドである。 早く反応しなきゃ。私はリカルドに電話かけることにした。怖いけど、そこは我慢。 発信を押し、耳に当てるとワンコールで応答があった。携帯、ずっと握っていたのだろう。 「もしもし、リカル…」 『おい撫子!今どこにいる!?』 「リカルド!落ち着いて!私は…」 『落ち着けるか!いきなりいなくなりやがって!ご丁寧に携帯の電源落としてんじゃねぇよ!』 「ご、ごめんリカルド!それにはあやま…」 『謝ってすむかよ!もう少ししたら警察に行くとこだったぞ…!』 「警察!?」 びっくりした。リカルドが心配性なのは知っていたけれど、まさか警察沙汰になってたかもしれないなんて。私、バカだな。 「ごめん、なさい…。リカルド。私、軽率過ぎたよね…」 『まったくだぜ。俺はお前の義父親にお前を任せられてんだ。責任があるんだよ、俺に』 「ごめん……」 今一度謝れば、リカルドは深いため息を吐いた。いっぱい迷惑をかけちゃったみたい。 『で、今どこにいるんだ?』 先ほども、そしてメールでもあったこの質問を再度問いかけられ、私は居場所の説明をすることにした。拳骨かでこぴんは覚悟しよう。 back |