「うげぇ……胸焼けしそう…」

私が涼太の下に訪れると、彼は大量のチョコに埋まっていた。

なんとなく予想はしていたけれど、予想以上というか、想定外というか。この学校の女子の恐ろしさと統率力を悟った。

ものの見事に誰も抜け駆けしないなんて、すごい。多分抜け駆けしたらそれはそれは恐ろしい制裁があるのだろう。

いや、無いかもしれない。
だって、私は涼太に告白して、今まさに恋人同士であるのだ。私が何もされていないから大丈夫なのかもしれない。予想……だけど。

「こんなにも食べれないッスよ……」
「いや、誰でも無理」
「紫原っちなら?」
「あ、可能」

涼太は「はぁ……」と深い溜め息を吐き立ち上がり、「気持ちは嬉しいんスけどね」と続ける。
そりゃそうだ。私という彼女がいるんだから、その愛を受け入れられたら困る。
いや、殴る。

涼太は机から溢れ返ったチョコレート達を紙袋に詰めていく。私もそれを手伝うことにした。

「あ、そう言えば涼太」
「なんスかー?」
「私のチョコいる?」
「いるッス」
「即答だね」

「好きな人のチョコは欲しいに決まってるじゃないスか!」涼太はそう言って頬を膨らませた。ハムスターみたいで可愛い。

「んじゃ、はい」

私は鞄にいれていた包みを涼太に渡した。涼太はそれを見つめ、それからかばっと顔を上げる。

「こ、これっ!」

キラキラと、その相貌が輝く。
やっぱりベタだったかな。ハート型の本命チョコってのは。

「主成分はたっぷりの愛だよ」

ベタついでに、私はそう笑ってみせた。