いつも通り郭嘉のクラスの外でHRが終わるのを待つ。でも、いつもよりドキドキしているのは気のせいじゃないだろう。

今日は2月14日。言わずもがな、バレンタインである。

私の手にした鞄の中には昨日四苦八苦しながら作ったチョコレートが入っている。

今までは本命なんていなかったから既製品のチョコレートを適当に配っていたけど、今年は違う。何て言っても郭嘉っていう本命がいるから。

幼馴染みの郭嘉のことを好きだと気付いたのはつい最近のことだ。だから、去年までは既製品だったチョコが手作りにレベルアップした。

目の前の教室から挨拶の声が聞こえ、前扉がガラガラと音を立てる。誰だろうと思いながら確認すると案の定郭嘉だった。

「待っててくれたのかな?」
「うん。一応ね」

ありがとう 郭嘉はそう言って笑う。すごく大人びた笑顔は外面用だ。郭嘉はいつもニコニコ笑って冗談なのか本気なのか分からない言葉を言う。本当は重い病気を背負っているということを誰にも言わず、顔にも出さない。私だけしか知らないということが嬉しかったけれど悲しかった。

私たちは帰路に着くことにした。郭嘉は歩幅を私に合わせてくれる。小さな気遣いが嬉しかった。

「ねぇ、郭嘉。それ、何?」
「これかい?」

郭嘉は手にした紙袋を持ち上げ、首を傾げる。私が頷けば、郭嘉は「チョコレートだよ」と笑った。予想通りと言えばそうだ。
郭嘉は来るもの拒まず、去るもの追わずのプレイボーイで、やたらモテる。そんな奴を好きになった女の内の一人が私なのだけれども。

ふーん 私はそうやって鼻で返事をし、鞄からチョコレートの包みを取り出す。

「じゃ、ついでにこれも」
「名前のかな?」
「うん」

郭嘉は明らかに手作りだと分かる包みを見て、どこか口角を上げた。やっぱり、いきなり手作りにしたら恋心がバレるだろうか。でも、言葉にする勇気なんて無いのだから、いっそバレてしまえばいいな。そんなことを考えながら、二人肩を並べて帰った。