俺にはさっきから気になることがある。
名前の手にしている箱だ。明らかに自分でラッピングしたであろうそれは、多分チョコレートだ。今日はバレンタインだからな。

でも、どう切り出せばいいか分からず、未だに聞けずにいる。そのチョコレートは誰にあげるのかを。ちなみに俺はまだ貰ってない。これは期待していいのだろうか。

「なぁ」
「あのさ」

聞かなきゃはじまらないよな。俺は決心して口を開く。しかし、名前と重なってしまった。なんというタイミング。
俺は「あー……」と短く呟いてから、「んじゃ、先にどうぞ…」と名前に言葉の続きを急かした。名前は気まずそうに頷いて唇を動かしてくれた。「どうぞ」「どうぞ」とかいう譲り合いは不毛だと気付いているのだろう。

「あ、あのね」

名前は俺と合わせていた目線を徐々に下げていき、どこかぎこちない面持ちだ。俺は続きが気になる気持ちを抑え、静かに続きを待つ。

「これ………」

おずおずと名前が差し出してきたのは例の箱だ。綺麗に包装されたそれは、まさに俺が見ていたもの。
俺は差し出されたそれを、恐る恐る受けとり、名前を見つめる。名前は俺と一瞬目を合わせ、真っ赤になった。

え……?

「ほ、本気か……?」

震える手と高鳴る鼓動に渇を入れて、名前に問う。すると彼女は恥ずかしそうに頷いた。

これは。そうだよな。そう思って、そうとらえていいんだよな。

ああ、俺もう、幸せすぎて死にそうだ…。

熱い熱いこの思いは、きっと名前も一緒なんだろう。