わんわんパニック

私は名字名前。
誇り高き狼女。秘密警察犬だ。

指フェチな私は人の指を触ることでその人の情報を見ることができる。日本警察の懐刀だ。

そんな私には相棒がいるのだが、こいつが問題である。

緒方柚樹。犬が大好きで大好きで仕方ない彼は、私のことを犬としか見えていないらしい。
可愛がって大切にしてくれるのは嬉しいんだけれど、でも私にとってはそれが厄介で仕方ない。

無駄に撫でてくるし過保護だし。時々一緒に寝ようって迫ってくるし。私にはウザくてウザくてしょうがない。

「名前ー!今日は珍しく休みだし、二人で買い物に行こうよ!」
「は?お前と二人でか?」
「うん!」

きっと緒方は散歩に行こうっていうノリで言ってるんだ。いや、別に散歩は嫌いじゃない。犬科の性か、散歩をするとワクワクして、心が逸る。あの感覚はわりと好きな方だ。

でも、緒方がめんどくさい。
買い食いするなって言ってくるわりには犬を見付けた途端に私をほっぽって。可愛い可愛いって……。私という相棒がいながら……。他の犬にまで手を出して…!!

本当にこいつはどうしようもないクソ犬好き野郎なんだ!
私は嫌いだ!他の犬にデレデレする緒方なんて!まったく胸くそ悪い!

おっと、つい感情的になってしまった。私は誇り高き秘密警察犬。もう少し冷静にならなくては。

「やだよ。散歩なら一人で行けばいいだろう」
「えー」

緒方はむすっと頬を膨らませると、後ろから私に抱き着いてきた。
ピクリと、私の尾が揺れる。

いや、違う。これは違う。
別に抱き着かれたって嬉しくない。緒方なんてうざいだけだ。

「名前?」

私が反応しないのを心配してか緒方が顔を覗き込んできた。私は思わず視線を逸らす。
意思と反して揺れる尾が煩わしい。

「もしかして名前…嬉しいの?」
「いや、別にっそんな」

緒方はにっこりと嬉しそうに笑うと、私の頭を盛大に撫で出した。

本当に嫌いだ。
緒方なんて。
すぐそうやって私を甘やかす。

私の気持ちなんて知らないくせに。

ああ、緒方も指フェチだったらよかったのに。なんて、柄にも無く願ってしまった。

そしたら、私は正面切って思いを告げなくてもよかったのに。
今も伝える気は無いが。

なんだかんだ言って、私は緒方が好きなんだろう……と思う。
醜い嫉妬もそのせいだ。

「緒方、たまには二人で家にいるのもいいだろう?」

私の申し出に緒方は優しく微笑み了承するのだった。



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たまえさんリクエストの緒方と緒方をうざがる秘密警察犬主です。

私が緒方を好きだから、こうなるのは分かっていただろう?
ふふふ デレもいいと思うんだ
たまには緒方に優しくしよう…
ちなみに、ステラが来る前なのでいません(出したかった…)

リクエストありがとうございました!