恋情板挟み



「名前さん!僕とデートしましょう!」
「いや、名前は私と勉強をする」

私には今、悩みがあります。

それは、幼馴染みの真月くんと零さんが、最近仲が悪いということです。

「二人とも、引っ張らないで!」

服伸びちゃう! 私がそう言えば、二人は同時に手を離してくれました。
流石は双子、息ぴったり。

そう、彼らは私の幼馴染みで双子の兄弟。
一応、零さんの方が兄で、真月くんが弟です。

顔はそっくりだけど、それ以外は何もかもが違います。

唯一似ているところを挙げるとすれば、強情なところでしょうか。
そこはすごくそっくりです。似なくてよかったのに。

「真月くん、もうすぐテストあるでしょ?だからほら、勉強しなきゃ」

私が真月くんを諭すように言えば、彼は肩を落としてしまいました。
「よかれと思ったのですが…」そう呟いています。

よかれも何も、真月くんには自分の成績の心配をしてもらいたいです。
どれだけ自分がギリギリにいるのか、彼は一切分かっていません。

真月くんは、どこまでも自由人です。
少しぐらいは枷をつけて欲しいと思います。

それに比べて零さんは堅物です。

余りにも堅いし、なにかすごい威厳を感じるので、零くんと呼べなくなってしまいました。
彼は零「さん」です。そんな気がします。
「くん」付けは……とても失礼だと思うのです。

零さんはとても整った文字で問題を解いています。
その文字に見惚れていると、微かに笑った零さんに「余りじろじろ見ないでくれ」と言われてしまいました。
私は慌てて顔を背けます。今の顔は……反則です。

背けた先に映ったのは両頬をハムスターのように膨らませた真月くんでした。

デスハムスターみたいです。

ごめんなさい。
嫌な例えをしました。私も嫌です、デスハムスター。

「ずるいですよ!名前さん、僕のことも見ていいですからね!」
「え、えと……」
「真月、君は問題を見ろ」
「零兄さんは黙っててください!」
「ほう?黙っていいのなら黙るが。後で宿題の答えを教えてと泣きついてくるなよ」
「ぐ……」

真月くんはいい淀み、肩を落としてしまいました。
流石は零さん。一枚上手ですね。

「じゃあ、真月くん、二人で宿題頑張ろ?」

私がそう微笑みかければ、真月くんもふにゃりと人好きのする笑みを浮かべてくれました。
やっぱり、真月くんはこの表情が似合いますね。

何だかんだ喧嘩しながら、何だかんだ仲のいいこの双子が、私は大好きです。



……………………………………

月美様リクエストの双子設定真月VS警部でした!

なかなかほのぼのしてしまったのは主が地の文で「ですます」口調だからですかね

素敵なリクエストありがとうございました!