友達の条件
「紅玉様…!?どこにいるのですか!?」
本当にあの人には困ったものだ。いや、そこが彼女の可愛いところではあるのだが。
私が使える紅玉様は、自らの出自が原因で宮中に居場所がない。その為、よくこうして逃亡なさるのだ。
それを探すのが従者である私の仕事。書類整理などの頭を使う仕事は夏黄文に任せて、私は宮中を走り回っていた。
私は元々紅覇様に使えていた女官だったのだけれど、友人の夏黄文にどうしてもと頼まれ紅玉様の従者になった。そして押し付けられたのがこの、紅玉様を捕まえるという仕事。
どちらかというと身体を動かすのが好きな私が紅玉様を探し回り。頭を使うのが得意な夏黄文が書類をまとめる。良くできた役割分担だと思う。
「紅玉様ー。どこにいらっしゃるのですかー?」
紅玉様は武官としての腕は申し分無いが、友人に恵まれなかったせいか、どこか不安定だ。彼女は寂しいのかもしれない。誰かが、支えれたらいいのに。神官殿は「はぁ?俺が紅玉と友人なわけないだろ」とか、素っ気ないことをおっしゃられるし…。
彼女に心を許せる相手が出来ればいいのだけれど。
「ここですか、紅玉様?」
鍛練場を覗くと、そこには本当に紅玉様がいた。私は自然と溢れるため息に苦笑し、鍛練場に足を踏み入れる。
一心に剣を振るうその姿はどこか気丈で、でも、それ以上に脆く写った。
「紅玉様、このような場所で何をなさっているのですか?」
「稽古よ。私にはこれしかないの」
唐突に声をかけたのに、彼女は眉根一つ動かさずに言ってのける。やはり、私の存在には気付いていたのですか。
「まったく、紅玉様は。他の姫君ならば、友人とお茶会などを…」
そこまで言ってしまったと思った。なんたる失言。これはクビにされてしまっても仕方ない。まぁ、その時はもう一度紅覇様に拾ってもらおう。あの人は戦える人なら誰にでも平等だし。
紅玉様はゆっくりと剣を下ろした。ああ、肩を落としていらっしゃる。なんと弁解したらいいか。いいや、弁解ならばしない方がましかもしれない。
紅玉様はこちらに身体を向けて、一気に間を詰めてくる。紅玉様のことだから切りつける…なんてことはなさらないだろうけれど。
「あの、紅玉様…」
「なら貴方が私の友人になりなさい……!!」
「…………え、ええ…?……えええ!?」
いきなりの申し出になんとも言えない。ただ驚くことしか。驚愕で上手く機能しない舌を精一杯に動かす。紅玉様はぷいっとそっぽをお向きになられた。
「そんなに私に友人が出来ることを願うなら、貴方がなればいいじゃない。別に、私は身分とかは気にしないし、お茶会なら貴方が私とやればいいでしょう?」
これは……紅玉様なりの頑張りなのだろうか。頬は真っ赤に染まって、瞳は何度もこちらの様子を伺ってくる。
この人はどこまで不器用なのだろう。この申し出、断るなんて出来るわけ、ない。
「私なんかでよろしければ、紅玉様の友人にしてください」
私の言葉に、紅玉様はこちらをお向きになられる。その表情は、今まで見たことがなかった、花が舞うような満面の笑みを浮かべていた。
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なつき様リクエストの「紅玉に友人認定される話」でしたー
紅玉ちゃんマジ可愛い
紅覇様や神官殿の名前が出てきたのは100%私の趣味です
この度はリクエストありがとうございました!