どうしろと


「で、祥音ちゃんは誰に嫁ぐのかしら?」

竹谷家でのお夕飯中、佑香さんの突然の発言に私は食べていた里芋の煮付けを吹き出しかけた。ハチは「悪い」とこちらに小さく頭を下げ、他の四人は気まずそうに目をそらしている。

「ど、どういうことですか!」

私は慌てて里芋を咀嚼し、飲み込む。隣に座った静琉さんはニヤニヤと笑いながらご飯を食べている。

「あら?うふふ、やぁね。誰と結婚するの?って聞いてるの」
「え、ええ!?」
「大川村ではこの話で持ちきりなんだからぁ」

「だから分かるって言ったでしょ」と静琉さんが呟いた。
な、なるほど。私が「男」に取り合われるわけではない、と。

「やっぱり兵助くんかしら?とってもいい子よ」
「お、俺!?」

知らない振りをしながら冷奴を食べていた兵助が、いきなりの名指しに肩を揺らす。助けてという視線を飛ばすと、目が合った瞬間に逸らされた。この裏切り者。じゃあ私も助けないんだから。

「あら、よく見たらその服、兵助くんの服ね?」
「え、ええ……そうなんです」
「へぇ……………ああ!そういうことね!あはは、ごめんなさいねぇ、お邪魔でしょう?」
「え?」

何を納得したのか、佑香さんは少し赤くなりながら笑っている。隣からは「え、まじ!?」という驚愕が聞こえてくるのだが、待って。当事者の私が理解できていない。

「若いからかしら、盛んねぇ」
「うわぁ!最近の中学生こわっ!」
「え!?」

勘ちゃんはずっとニコニコ笑っていて、三郎なんて完璧知らない振りだ。雷蔵は赤くながら黙々とご飯を食べていた。ハチも何か分かったようで真っ赤になりながら、なんか悪い と謝ってきた。兵助は「なるほどね…」なんて呟いている。

「ああ、でもちゃんとしないと大変だからね、気を付けるのよ?」
「うーらーやーまーしー」
「いや、だから何が……………あ」

何となく分かった気がする。
分かりたくもなかったけれど。
この二人、何を考えているんだ。

「ち、違います!これは川で遊んで服が濡れたから貸してもらっただけで!」
「お二人が期待するような展開はありませんよ」

慌てる私の言葉に続き、落ち着いた兵助の言葉が重なる。佑香さんと静琉さんは一瞬きょとんとした顔をなされてその後、「そうなの?」と聞いてきた。
私が頷くと佑香さんはごめんなさいねぇと笑い、静琉さんはつまらないのーと唇を尖らせた。

すごい誤解を与えてしまっていたようだ。無事解決できてよかった。

それにしても……。

「分かってたなら助けてよ!」

五人に向けた私の叫びは、三郎の「面白そうだったからな」で一蹴されてしまった。


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