目の保養のため遠くから見てました
忍術学園の中庭に存在する木の上から今日も彼を見守る。葉や枝に紛れて、バレないように。

「やだ、もう滝夜叉丸くんかっこいい〜」

私の言葉に隣にいる友人は「四年なんて無理無理」と首を振る。友人は六学年が目的らしい。確かにかっこいいけれど、滝夜叉丸くんだって負けてない。彼は忍術学園で一番かっこいい。

私たちはフリーのくのいち。時々、外部講師として忍術学園のくのたまたちに忍術を教えに来校している。
その時に私は見つけてしまったのだ。平滝夜叉丸くんという少年を。

とっても綺麗な顔立ちに、あの自意識過剰な性格。なんというか、どツボだったのだ。
それからというもの、暇があれば忍術学園に訪れて滝夜叉丸くんを探して、見つけたらストーカーよろしくつきまとっている。もちろん、隠形の術を使ってバレないようにしながら。

「私先にくのいち教室に行っちゃうからね〜」

友人はそう言って姿を消す。あんなに綺麗な滝夜叉丸くんを目の保養にできるのにもったいない。

「ああ〜……でも本当にかっこいい」

滝夜叉丸くんは長屋の縁側に腰をかけて自らの武器である戦輪の手入れをしていた。あの武器には名前があるらしい。自分の武器に名前をつけるとかかわいすぎる。
滝夜叉丸くんは戦輪を磨き終わると満足そうに笑った。

ああああ!!!めちゃくちゃかわいいかっこいい素敵!!!!

油断して気配を出してしまいそう。それは絶対にだめ。だって、滝夜叉丸くんに私がこんなことをしていることがバレたら立ち直れないもの。バレないようにバレないように、遠くから見ているだけで幸せ。

あ、滝夜叉丸くん戦輪構えてる。
投げてみるのかな。
投げたところ、見たことないな。見てみたいな。

あれ、こっちに構えてる?

え、待って。

もしかして、それこっちに投げる気ですか?

バレてはいない。バレてはいないはずだ。
私だってプロだもの。そんな簡単にバレる隠形の術なんて使わない。

だったらそうか。私が隠れてる木を狙ってるんだ。
戦輪で枝を切ろうって、そういう試し切りを……。

いやいやいや。待って待って。
それ、ほぼ私目掛けて投げる形になりますよね?だって私、木の上にいますもんね?これ、確実に存在バレますよね?


ど う し よ う 。


ずっーと遠くから見ていたから、バチが当たったんだ。
神様、変態的行為を繰り返してすみません。今日私は好きな人に嫌われてきます。

グッバイ、私の淡い憧れ。
そしてようこそ、侮蔑の視線。私は君を歓迎してやるよ。

だからどこからでもかかってきなさい滝夜叉丸くんよ!!!!


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