*もしも*
「砂夜子ちゃん、砂夜子ちゃん。もしも私が男だったらどうする?」
「遊菜が……男……?」
「うん、そう」
「きっととてもモテるから、距離をとっていた」
「えー、そうかなぁ?」
「なら逆に、私が男なら、遊菜はどうする」
「分かんないけど、今みたいな関係じゃないのはなんとなく分かるよ」
「なら私はもしもの世界などいらない」
「砂夜子ちゃん……?」
「私は今のままで幸せだ」
「そうだね…私も、今のまま……」
(私たちにもしもはいらない)
*出られない部屋*
「『指を合計23個差し出さないと出られない部屋』…だって」
「ならば私の指を20本すべて差し出そう。悪いが、残りの三本は遊菜が……」
「ま、待ってよ!砂夜子ちゃんの指はだめ!」
「しかし、部屋の外には十代が……」
「確かに十代に会えないのは寂しいけど、砂夜子ちゃんが傷つくのなんか見たくない。そうなるぐらいなら、部屋から出れなくていいよ」
「遊菜……」
「私たちなら大丈夫!」
(二人ならきっと)
*大学生*
「砂夜子ちゃーん。学部の友達に合コン誘われたんだけど、砂夜子ちゃんも来ない?」
「食事は出るのか」
「出るみたいだよ」
「仕方無いな」
「わーい!あ、でも今日の講義大丈夫?」
「いい。もう必要な単位はとったし、ジムがうるさい」
「あはは。まさか砂夜子ちゃんまで考古学専攻するとは思わなかったなぁ」
「入れ入れとうるさいからな」
「十代は教育学部行くし、ヨハンは芸大」
「遊菜は心理学部か」
「うん。経験がいかせるかなーって」
「無茶はするな。私も、十代も………それからヨハンやジムも遊菜が大切だから…」
「分かってる。はいはい、堅い話はおーしまい!ご飯食べに行くよ!」
「合コンではないのか」
「そうなんだけど、ご飯食べに行くだけって思った方が気が楽なの!」
「そうだな……ご飯に行くか」
(あなたがいる未来)