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「ふっ、まさか無事に二人とも生き残るとはな、さて、これからが楽しみだ」

ぼんやりと視界が戻ってきた中に微かに聞こえた、お父さんの声。どうやら、私達は生き残れたらしい。隣に生まれた時から知る幼い気配があったので安堵した。

「あら、目が覚めたのね」

そんな私に気が付いて、ひょいと私を抱き上げたのは、お母さん。まだ力が入らなくてだらんと手足は下がったままだ。
いつもなら抱き着く筈の手がその状態でも特に気にした様子もなく、お母さんは私を見て笑う。

(美人、何だけど、残念な人だよね…)

一般的な親元で今まで育ってきたからこその落胆。子供の体調を気にしない親ってどうなんだろう…と、もし手が動いていたら、頭を抱えたい。

「さて、我が家の先例も終えた事だし、必要なのは名前だな」

そういえば、この一週間、まともに名前なんて呼ばれた記憶がなかった。だからこそ、私の半身の事を私は呼べないでいたのだから。

「兄をキルア、妹はイロハだ」

私は妹なんだ…と言うのは、まぁ、別にどっちだって良かった。だけど、その双子の兄の名前を聞いて、私はある事を思い出す。

待って、待って、
キルア…?
その親がシルバとキキョウ。ってまさか…

前世で体験したからこその予感。
だとしたら、この変な先例さえ頷ける。
ふと、先程から感じる外の気配に向かってお父さんは声を掛けた。

「イルミ、ミルキ、入ってきなさい」

そうして呼ばれた呼称に、私は確信した。ここは…

「生き残れたんだ、赤ん坊」
「ふぅん。こんなちっこいのに、あれに堪えれたんだ」

入ってきた黒髪の男の子二人。一人は細身でもう一人はややぽっちゃりとした体形の子達だ。だけど、その顔はやはり兄弟と思わせる。顔は何となく似ていた。

「ああ。今日から正式なゾルディック家の跡取り候補だ。よろしくな」

そう言ってニヤリと笑うお父さんは、正しく、あの、シルバ=ゾルディック家頭首だった。

つまり、私はHUNTER×HUNTERなる世界へ転生していた、そういうこと。

しかも、よりによって、暗殺一家って…
どうせなら、平和そうなくじら島のが良かった。

そう思わずにはいられないくらいに、私はこの原作が危険性が高いかを知識として知ってしまっていた。

私、この家で生きていける自信なんて…
幼いキルアに泣き付きたい衝動に駆られたのは言うまでもありません。

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[mokuji]



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