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暗い暗い水の中、温かいそこに私は息をするでもなく浸かっていた。
さっきまでの息苦しい感覚はなくなっていた。

(この、感覚は…)

体感したことのある記憶に、私は身体をよじる。ぽよん。弾かれるような弾力に、私は十数年前の記憶を思い出す。

(やっぱり)

ほぼ確信した。

「あら、今動いたわっ」

水越しに女の人の声が聞こえる。

「そうか。立派な殺し屋になりそうだな」

続けて聞こえた男の人の声。その言葉の意味に、私は眉を潜める。"忍"ではなく、"殺し屋"。その言葉の違いに私はまた違う親元へ転生したと分かった。

(また、随分物騒な所に生まれるんだ…)

忍の世界に生まれて、死に物狂いで修行して、人とは違う私にそれでも暖かかった仲間の皆。
大切なあの人。
あの人とある為に、強くなった。だから
どうせなら、あの人の下に行きたかった。

ふと先程から感じていた気配が、私の手に当たる。まるで私を慰めるような気配に、ほわりと落ち着けた。

(この、子が、私の半身)

新たな生に、母胎の中に居るという事実。
失ってしまった忍の世界の私に、未練がないなんてないわけで、だけど、改めて感じたこの小さな存在が、私に新たな人生を歩む力をくれた。

元気を出して

まるでそう言ってくれているような子に、私はまた生きようと思えた。

うん。
この生でまた、頑張ってみよう。そしていつか、例え姿が変わっていたとしても、偶然あの人に出会えれば良いと思う。


「おぎゃぁあ、おぎゃぁ」

「よくやった、キキョウ。男女の双子だ」


嬉しそうな声に、私も元気に空気を求めてのあいさつ、産声をあげた。

だけど私はまだこの時、またしても世界を渡っていた事に気付いていなかった。


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