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「アルカを知ってるかって?」
あの後、イルミ兄さんが居る時は念による壁が作られてしまい簡単にアルカへ会いに行く事が出来なくなってしまった。
印は付けたから、飛雷神なら行けるとは思うものの、行けたからといって、中に念による罠が無いとも限らない。
アルカにあの時感じた気配は、何だったのか、気にはなっているけど、確認するのもおじいちゃんが不在ではまともに話せる相手すらいない。
ふと、思い着いたのが次兄のミルキ兄さんだった。彼も任務を請ける身だから知っている筈と推測した。
「ああ、ナニカか…あれには極力関わりたくないな。下手したら、命を落とすし」
そうお菓子を咀嚼しながら話すミルキ兄さんは、ネットに夢中で、まるで私の元いた世界で言う現代のニート、オタクと称される人間に間違いない。
だけど、やはり流石は年上なだけあり、アルカのそれについて知っているみたいだった。
「命を落とす?」
「ああ…そういやお前らアルカの所へ行き来しているらしな。ま、せいぜい、あいつのわがままを断らない様に気をつけるんだな」
そこまで言うと、ミルキ兄さんはヘッドフォンを付けて、もう聞く耳持たずといった体勢だった。
「ま、待ってミル兄、詳しく教えてよ」
ぐっとパソコンに向かう顔を引き止めれば、心底面倒臭いと言う顔をされた。
「親父に聞け。オレはガキは嫌いなんだよ」
そう言うと、今度こそパソコンへと意識を向けてしまった。
「お父さんに、か」
実はあの父親は兄イルミ並に苦手だったりするのだ。兄さん程恐くはない。だけど、彼はまず間違いなくゾルディック家の頭首なんだ。話しをするにしても、何かしら裏を含んだ物言いに、忍をやっていた習性からか、妙に探ってしまう。
「あっ、イロハ!ここにいたんだ!な、これから父さんにアルカのこと出してもらうようにたのみに行こうと思うんだ。イロハもいっしょにきてよ」
廊下を自室へと罠を避けつつ歩いていると、前方からキルアの明るい声が聞こえた。
その内容に私はタイムリーだと思い頷いた。
* * *
「アルカを…?」
「ダメよ!キル!イロハ!あの子はあそこに閉じ込めておかなきゃいけないのよ!」
案の定反対をする両親。だけど理由を聞こうにもお母さんのヒステリックにスイッチを入れてしまった状態では話しになりそうもない。
「どうしてだめなの?」
キルアはそんな母に驚きもせずにお父さんに聞いていた。
「あの子は、別の何処かからきた"ナニカ"だ」
そう話し出したお父さんをお母さんは漸く落ち着きを取り戻し、話しに耳を傾けた。
どうやらアルカは生まれた時は未熟児だったらしい。だけど、しきたりだからと先例をした。そして、一度死んだらしい。だけど、その一時間後、奇跡的に息を吹き返し、そうしてその時には例の姿を持つ様になっていたそうだ。
「両親であるオレとキキョウはどうやら殺せないらしいが、あいつが1歳になり、執事に面倒を頼んだ時だった。あれは、自分の思って言った事を聞き入れられなかった執事を殺している」
以降、観察された結果が、異例な体質を持った子なんだそうだ。
だから、ミル兄はあんな事を…
「…アルカは何も望まなければ危険ではないし、言ったとしても、無理のないものなら問題ない?」
そう私は理解したことを端的に話せば、お父さんは一瞬目を見開いたけれど、続いて頷いた。
「確かに、イロハの言う通りではある。だがな、あいつはゾルディックの人間だ。そう簡単なねだりではまずないぞ?」
ニヤリと笑うお父さんに、私はやっぱりこの人は意地が悪いと内心ひやりとする。だけど、それを悟らせないように私は不適に笑い返した。
「なら、叶えてあげますよ。何だって」
行こう、キルア。
途中から話しに着いていくのにいっぱいだっただろうキルアに声を掛けて私達は地下に向かった。
「あの子を絶対殺しの道具なんかにはさせない。もちろん、キルアもね!!」
「お、おう」
いらついた私は思わず子供であることも忘れて素を出してしまった。そんな私にキルアは着いていけないのか思わず、と言ったように返事をしていた。
どうしてアルカに対しここまで感情的になるかは分かっていた。
あまりにも、状況が似ていたからだ。過ぎた力と畏怖の感情によって蔑まれたあの人に。
やっぱり、強くなろうと思う。
その為には当面任務をしなきゃいけない。それは甘んじて受けよう。だけど、同時に誓う。決して任務以外には人殺しはしないって。
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[mokuji]