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「キルとイロハを?」

「ああ。流石に言葉を覚えただろうからな。あの二人ならお前達と違って遊んでやれるだろうしな」

長兄イルミの感情を映さない筈の目に若干の怒りが見れるのは珍しいことだった。それと言うのも、例の部屋の主とを祖父、ゼノが双子をアレと会わせたと言うからだった。

「…確かにあの二人の性格からしてアレとは接触できるだろうけど、オレは、アレを二人に関わらせるのは危険だと思うよ」

心底嫌そうに話すそのイルミにゼノは苦笑するしかない。

「まぁ、あの子のナニカが二人に刃を向けたら、その時は、始末する他ないじゃろう」

あくまで双子を優先するつもりがあるゼノにイルミはやはり後継者はあの二人だと確信する。
しかし、

「アレが牙を向いた時点で、二人は終わりだ。その時は、おじいさんにも責任はとって貰うからね」
イルミの的確な指摘にゼノは今度こそ笑った。

「なぁに、心配しなくともあの二人は死にゃしない」

何処にそんな自信が、とイルミは思ったが、取り敢えず話しは終わった様で、去る様子を見せるゼノを見送って仕事に行くことにした。

* * *


「キルアお兄ちゃん!イロハお姉ちゃん!」

「アルカ、走らなくても私達がそっちに行くから待って!」

「うん!」

私達と年子で生まれたと言うアルカと対面して数日。私とキルアは良くアルカの元で遊ぶ様になっていた。

「キルア、その顔アルカが心配するから隠してって言ったのに」
「あ?平気だって!ちょっとした打撲なんだしすぐ消えるって言えば問題ないよ」

キルアとやってきた地下に今は壁はついていない。
執事達は念が使えるから平気だけど、私達には無理だからとおじいちゃんが解除したらしかった。

「あれ?キルアお兄ちゃんそのほっぺどうしたの?」

案の定尋ねてきたアルカに、キルアは笑ってアルカの頭を撫でる。

「これは強くなるための修行で付けた怪我なんだ。心配しなくてもすぐ治るから平気だよ」

優しく笑うキルアに私も頷く。

「そうだよ。強くなれば、それだけアルカとも一緒にいられる。だから、頑張るね」

そう言えばもの凄く表情を明るくさせアルカは私達に抱き着いてきた。

「やったあ!キルアお兄ちゃんとイロハお姉ちゃんと一緒!うれしい!」

本当に無邪気に笑うアルカにこれが本当に、あのゾルディック家の子なのかと、疑ってしまう。

「キル、イロハ、修行の時間だ。それはおいてついておいで」

ふと、アルカの部屋にやってきたイルミ兄さんに名前を呼ばれ振り返れば、アルカの事をそれ呼ばわり。分かっていたけど、イルミ兄さんは、弟を殺人人形としか見ていないのを改めて実感して、ふつりと、怒りが込み上げてきた。

「イルミ兄さん、」
「アニキ」

「アルカも私(オレ)達も道具じゃないよ!」

同時にハモった声に私もキルアもお互い驚いた様に顔を合わせた。だけど、やっぱり、私達は双子だからかすぐにイルミ兄さんに向き直った。少し、睨みを効かせて。

「…やれやれ、とんだ弊害が出たみたいだな」

すると、イルミ兄さんは何かを考える様に一瞬黙ると、こちらにゆっくり近付いてきた。

ズズ…ズ、

「「!」」

(まずいっ…)

気配が変わった。しかも、殺気を含むその強烈な圧迫感。
恐らく、念のオーラと言うやつだろう。今の私達じゃ、とてもじゃないけどイルミ兄さんには敵わない。
試しにチャクラを練ってみたけれど、生命エネルギーである念に対し、身体エネルギーと精神エネルギーによるチャクラでは似ていても攻撃力ではチャクラのが下回るようで、全く防ぐ事が出来そうになかった。

それなら、いっそここから飛雷神の術で逃げるのも有りだと考えた。

じりっ

また一歩、イルミ兄さんが近付いた。瞬間、霧散された空気。

「…」
「!?」

驚く私達を尻目にイルミ兄さんは口元だけに孤を描く。

「やだな、二人を殺す訳ないだろ?冗談だよ。今のは駄々をこねた二人へのちょっとした罰だよ。とにかく、早くおいで。じゃないと、修行を疎かにするくらい遊びに夢中になると、ここに来れなくなるからね」

ぽん、と私達二人の頭にその掌を乗せると、イルミ兄さんは出口へと向かう。

私達は極度の緊張のせいで直ぐに復活出来なかった。

「キルア、イロハ、わたしは大丈夫だから行って」

すると、後ろからちょんちょんと突かれた気配に振り返ると、アルカは笑っていた。

「また会いに来てくれる?」

そう首を傾げるその子に私は違和感を感じたけど、イルミの気配が揺らぐのを感じて、とにかくすぐに頷いた。

「また必ず来るよ!それじゃぁ、行ってくるね」

ぐいっとキルアの腕を掴んで入口まで引っ張る私に、漸く復活したキルアが後ろを振り返って「またな」と言っているのが聞こえた。

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