消してはいけない記憶
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生まれた順番から、私が妹と言う立場になってしまった。そして、双子の片割れはお兄ちゃんだった。

(どうせならお姉さんになりたかったな…)

過去は沢山の下の子達に囲まれていたし、どうも大人であった時の記憶が過ぎってしまって甘やかされる事が落ち着かなかった。

「見て、ハリーとリオってば貴方にそっくり」
「いいや、ハリーの眼は君似だよ。それにリオは髪以外は君にそっくりだ」

どうやら私の名前はリオで(今生でも性別が変わらなかった)、双子の兄はハリーと名付けられたみたい。
前世での幼少期での記憶は無いに等しいが、こんなにも嬉しそうに私を見て笑ってくれる両親を見て、前世の顔も知らない親に想いを馳せてみる。

(前世の私もこんなふうに親は迎えてくれたのかな…)

そして基本、施設の子は殆どが捨て子だったのを思い出し、それは無いかな…と暗くなりかけた思考。だけど今は温かく笑う両親に、産まれてこれて良かったと嬉しくなった。

「あうー」

思わず笑ってしまう私。生後2ヶ月で言葉を喋るなんて出来ないのだから声をだしても何だか解らない。

「!?笑った!リリー!リオが笑ったよ」
「本当!あら、ハリーも笑ったわよ!」

「きゃっきゃっ」

私の嬉しさが伝わったのか、ハリーも一緒に笑ってくれた。
ああ、前世の私に是非伝えたい。私は今幸せです。

それにしても、ハリーとリリーだなんて、凄く聞き覚えのあるフレーズだなぁ。
ぼんやり頭の片隅に霞みがかったようにある記憶に、私はなんとか思い出そうとすると、突然鳴るインターホンの音。

「ああ、きっとシリウスだぞ」

お父さんの方はそう言うと、玄関へと向かって行った。
玄関の開く音と共に、ジェームズと言う相手の声が聞こえた。

あっ、そうだ。
どうして気付かなかったんだろう。施設で子供達に読んであげた事のある児童書だ。確か、"ハリーポッター"その主人公の男の子とその両親の名だ。名付け親はシリウス。余りに一致する名前に、私はまさかそんなことある筈無いし、私がいる時点でそうじゃない。だからきっとただの偶然の一致に過ぎないのだろう。第一、本の世界に転生だなんて漫画じゃあるまいし…

「ははっ、本当、写真で見た通り二人にそっくりだな!」
「ああ、だろ!」

そんなことを思っていると、爽やかに笑う男性が目の前に現れて、私は徐々にまさかが本当になって行く気がした。

「男ならハリー、女ならリオって言ったけど、まさか二卵性の双子だとはなぁ」

「ははっ、俺も驚いた!でもシリウスに両方考えて貰っててよかったよ!
あっ、と忘れるとこだった。
ハリー、リオ!初めましてだ!名付け親のシリウス・ブラックおじさんだよ」

「おい、まだそんな年じゃねえよ」

「冗談だって」

軽口をたたき合う二人に、微笑んで見守るお母さん。

「きゃあっ」

それにつられるように、笑いだすハリーに、また笑顔になる大人達。

だけど、私はそれ所ではなかった。間違いなく、私は"ハリーポッター"の世界に転生してしまったと確信したから。

しかも主人公の双子として!



消してはいけない記憶



消えてしまう記憶が今は惜しい

だってこの記憶でこの人達の笑顔を護る事が出来る筈だから


end


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