再会、変化した君達(後)
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「お前の妹、どうやらとんでもなく賢いな」

ハンスさんにリオを保護している特公の人を探して貰うようにお願いして一週間。ハンスさんは面白そうにそれを話してきた。

「どういう意味ですか?」

リオの居場所の手掛かりが掴めたのかと期待した僕は、変なニュアンスで始まった言葉に眉を潜めてしまう。

「魔法省の魔力感知に引っ掛からない。どうやら特別な術に掛かってる。つまり、今のお前と同じだ」

本当、流石双子だな。
笑ったハンスさんに一体何がそんなに楽しいのか…とにかく、リオに関して早く情報を下さいと言えば、ハンスさんは何かを思案する様に僕を見てきた。

「な、何ですか」

何を言われるのか、身構えた僕に対して、ハンスさんはあっさりとした口調で僕を突き落とした。

「お前、暫く妹探すの諦めろ」

「なっ!?」

驚いて言葉を失った僕に、ハンスさんはさてと、と珍しくあまり貯めていない書類に向き直ってしまう。

「ハンスさん、なんで辞めないといけないんですか」
「お前が妹を探し出そうと思ったら十年は掛かる」

どうにも納得できなくてハンスさんに意味を聞くと、やっぱり何かを確信した様に言い返された。

十年…てそれは恐らく最低でも成人はしろと言うことだろうか。

「だから、俺の下で修業だ。特殊公安官になれば、もっと早く見付けられるぞ?どうする、なるか?ならないか?」

ニヤリと笑って頬杖までついて言うハンスさんは、そんなの、一つしか僕が選ばないのを分かっていて聞いてるんだ。じろりと悔し紛れにハンスさんを睨んで、答えた。

「なるに決まってますよ」
「よしっ、なら今日からお前の一人称は俺にしろ」

するとハンスさんからの第一声はなんと僕の呼び方を変えろと言うことだった。

「はい!?」
「僕なんて言ってる奴は弱く見られがちだ。まぁ陛下や公式の場はいいが、普段は俺な。使えなきゃバツゲームやらす」

横暴な…と唖然としながらハンスさんを見ていたら早速何か書類を渡して来た。

「魔法省のバイトの契約書な。因みにこれ、本来17歳以上が対象だから、ここには17で書いて、偽名使え」

書類を書くのは予想は出来たけど、対象年齢を聞いて僕は驚いた。

「ハンスさん!僕はまだ8歳ですよ!?いくら何でも見た目でバレますよ」

「俺達は魔法使いだぞ?そんな事魔法でどうにかしろ。後、僕って言ったな。罰として腕立て百回な」

僕の抗議に対してハンスさんは何でもないように魔法を使えと言い、そして早速罰則まで与えて来た。

「そんな簡単に言わないで下さい!僕はまだそんな魔法知りませんよ!」

「調べろ。資料ならそこの棚の中にある。んでまた"僕"っつっただろ。腹筋百回。後、抗議した事に対して罰な。腕立て百回追加」

立て続けに追加されていく罰にため息を吐きたくなった。でも、確かにハンスさんの言う通り、魔法は先ず研究する事も大事だと思う。
何でも特公のハンスさんや、部下の人達は既存の魔法を研究して、独自のオリジナル術を一人一つ以上は持ってるらしい。なら、いつか僕もそれを作りたい。その為には先ずはハンスさんの課題をこなす事だ。

「よしっ!」

気合いを入れた僕は取り敢えず罰則の筋トレを始める事にした。
そんな僕を見てハンスさんが企んだように笑ってるのをこの時僕は気付かなかった。

* * *

「明日、入部試合やるから体調万全にしとけよ」

「…は?」

それは俺が特公の室長ハンスさんの助手になって一年が経った時だった。いきなり部屋に現れたハンスさんは、唐突に試合をする話しを切り出した。その唐突さに、思わず間抜けた返しをしてしまう。

「だから、試合だよ。特公にお前と同期で新人が入る。そいつと簡単な手合わせしてもらう。特公には強さも問われるからな?挨拶だと思って闘え」

ニヤリと笑うハンスさんは、何か企んでいるのは確実なんだけど、俺には未だに何を考えているのか分からなかった。
仕方なく、返事を返した。

「分かりました。それで、何かルールがあるんですよね」

「流石ハリー、察しが良いな。明日は本来の姿のままに面を着けて戦ってもらうぞ。それと、試合終了までは声を出すな」

「どうしてですか?」

「子供だと油断させるのも良し、特公は隠密業だから声抑えるのは本番は当たり前。だからだ」

油断するのか?とも思ったけど、自分の年齢でここに居るのが異例なので確かに相手に油断を招く事にはなるかもと思い直す。


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