再会、変化した君達(前)
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「弟が家出しただぁ?」

ダーズリー家を出て直ぐに向かったのは、私の師匠であるパルスさんの下。兄がいるのは話した事があるし、フィッグさん経由で何かしら知っていると思う。しかも、魔法界では有名なハリー。だけど、今までパルスさんは魔法界でハリーは有名だとかそんな話しは一度だってしたこと無かった。だから、きっとその事には触れては来ないと思って話した。

「はい。パルスさん、兄も魔力があるのは確か何です。居場所がどこか調べて頂けませんか?」

魔法界での生き残った男の子が、まさか家出して行方不明とか騒ぎになるだろうか?と不安もあったけど、確か11歳の誕生日に手紙を送ってくるほどだから、魔法省の人辺りはきっと未成年の魔法族は把握してるはず、と思い出したので、それ程焦る事でもないかと特殊公安官というパルスさんに調べて貰えないかと尋ねに来た所だった。

「あー未成年の魔法使いなら確かに魔法省が知ってる…けど、うちの管轄じゃないからなぁ」
「そうですか…」

無理は言えない。何と言っても、パルスさんの在籍する特公はほぼ魔法省での認知度は低い。それは任務内容に法律で裁けない物が多くあるからで、それは外部からのと言うより国からの依頼。何をしているかは魔法省内部には隠されていて、表向きは闇払いの戦闘後処理だったり雑用だったりする。だから、魔法省内での権限は一般事務より低いと聞いた事がある。

「仕方ない。おばちゃんに魔法省に問い合わせするように言ってやるよ。おばちゃんはマグル界でお前達の世話係やってるし。魔法族の子供がいなくなって心配でって問い合わせに対してなら省の人間も動いてくれる」

「ありがとうございます!あ、の、因みに、私も家出してきちゃったんですけど、それは内緒にして貰えると助かるんですけど…」

「は、」

流石パルスさん。良かった。安心したと思えば、それだと今度は自分が捜索対象に成り兼ねないと分かって言わないでと頼んだ。すると、案の定パルスさんは驚いて見返してきた。

「あんた、遂にあいつらやっちゃったとか…」
「ちっ違います。あれ、ち、違わないかな。私、あの人達の記憶消しちゃいました」

常々ダーズリー家がどれ程ハリーに辛い思いをさせていたかを話していた。だから、パルスさんはそんな奴ぶっ飛ばせば良いと言って怒ってくれていたのを、私もいつかしますよと冗談で流していた。まさか、本気にされると思ってもいなかったし、実行してしまうとも思わなかった。

「何だ、その程度か。心配ない。杖を使ってないリオの力じゃ2〜3年持つ位だよ。そのうち思い出す(まあ、普通の子供がやった所でもって一日何だろうけど…)」

なんて半端な期間、いやでも良かった。元に戻るのか。後で魔法省で何か言われたらどうしようと思い始めた所だった。

「そうですか、なら、私は暫く家出します。11になるまでなら魔法は自由だし、パルスさんとの修行は続けたいので、何かあったら連絡下さい」

ハリーの行方はフィッグさんに任せれる。そうしたら何だか安心した。さて、なら次に私がする事はヴォルデモート捜しだ。私は魔力が無いと思っていたけど実はあったと分かったし、なら私にも少しはヴォルデモートを倒す力があるはず。そこで原作の知識を生かして彼を攻略してみるのもいいかもしれない。それなら分霊箱を破壊するのが一番。場所は何となく覚えている。後アズカバンにはシリウスおじさんがいるはず。一度会いに行ってもみたい。うーんと考え始めた所でパルスさんが踵を返した私の頭を勢いよく掴んできた。

「きゃっ、何ですか!?」

突然の事に驚いて声を上げた私に、パルスさんは地の底から出した様に低い声で怒ってきた。

「リーオー?あんたどこ行くつもり!まさか8歳のガキが一人で生きていくなんて無茶苦茶しようとしてないか」

「えっ…ダメですか」

確かに無茶苦茶だけど、中身は大人だから、平気だと思う私がいる。第一私は魔女なんて者でもあるから、ある程度そこらの子供より強いし。

「何かあるなら頼れと言ったでしょ。そのダーズリーってマグルが記憶取り戻すまではうちがあんたの保護者位やってやるよ。勿論お兄ちゃんが見つかったら一緒にね」

何て良い人何だろう。私は感動の余りパルスさんに抱き着いてしまった。ああ、年々子供っぽくなっているのはきっと、子供の期間が長いせいだと思いたい。

「パルスさん!ありがとうっ!凄く嬉しい」

「こ、こら!あんまり引っ付くなっ暑いだろ」

こんな秋頃に暑いなんて照れ隠しだと気付くけど、私は素直にはあいと返事をして離れた。ああ、ハリー、良い人のいる環境がどれ程幸福な事か、早く伝えたいよ。だからどうか、無事見つかって下さい。


* * *


「リオ、うちの室長が新人との手合わせをしたいと言ってきた。お前も新人だ。そいつとは同期になるからバッチリ挨拶してやれ」

あれから一年。パルスさんと暮らし始めた日に特殊公安官になれと誘われて一年。何だかんだで役に立つだろうと了解して修行や、任務に助手として引っ張られ過ごすうちに、遂に9歳と言う最年少で魔法省特殊公安官に任命されてしまった。

「あの、本当に私が特公に入って良いんですか?」

未だに信じられずにパルスさんに問えば、ニッと笑ってパルスさんは腕組みまでして頷いた。

「特公次席のうちが育てたんだ。実力は保障してやる。第一、許可したのは陛下だ。大臣何かより偉い人に貰った肩書きなんだから、文句なしだ」

そう。実は、特公の発足者は誰もが知るイギリス陛下だったらしい。任務に国からの依頼が多く、またマグルとの戦闘が多いのもその為だった。

「私、とんでもなく世間から離れた部署に入っちゃったんですか?」
「何を今更…うちと一緒にやってきて気付かない程能天気な頭してないだろ?」
「そう、ですけど」

頭を軽く小突かれて言われれば、否定は出来なくて、頷いた。だけど、どうしても、まだ前向きになれない。理由は分かっている。

「リオ、兄さんの事を気にしてるなら、前にも言ったけど、うちに任せておけって」
「パルスさん、ハリーは本当に無事何ですか」

一年前、フィッグさんがハリーの居場所を魔法省に問い合わせてくれたが、魔力が感知されなかったそうだ。その後魔法界でどんな騒ぎが起こったかはもう、どうだって良かった。魔力が無いつまりは死んでいる可能性が高いと言われたようなものだった。なのに、ハリーが死ぬわけないと分かっているから、心配なんだ。
何か危険な目に遭っているのではないかと。

「特公に入ればある程度魔法省内部を探る事だって可能になる。自力で捜すのも幅は広がるんだけどな」
「分かりました。公安官拝命します」

やっぱり、ハリーを捜すのに少しでも条件を良くしたい。だから特公にはなっておくべきだと思った。

「承諾したな。なら、明日夕刻に相手と手合わせだ」

そう言って不敵に笑ったパルスさん。こういう時、必ず何か企んでいるのがここ数年で気付いていた。だけど何時も避ける事など出来ないので私は諦めて溜息を吐きつつ頷いた。

「分かりました」

* * *

「では、これより模擬戦闘試合を開始する」

翌日言われた通りの空き地にパルスさん同伴の下向かえば、以前会った特殊公安官のハンス・ベイル室長と、例の新人さんがそこには居た。
新人さんを見れば魔法族でありながらほぼマグルの服装で、動きやすい物を着ている。それと、初めてパルスさんと会った時の様に狐の面をしていたので顔は分からなかった。そして、驚きなのが、相手も子供だと言うことだった。
私も同じ面をしていたので顔は見られていないけど、明らかに子供と分かる体格だったので、相手も驚いているのが気配で分かった。
なるほど、パルスさんの企みはこれか…
くつくつと隣で笑う気配に呆れた様に視線を投げれば、パルスさんは悪びれる様子もなくニヤリと笑った。思わず突っ込みたくなってしまったが何とかそれは飲み込んだ。

「試合が終るまでは喋るなよ」

模擬戦ルールだとか言ってこの場所に来る前に言われた事をもう一度言ってきたパルスさん。破れば任務雑用を多くするとまで言われてしまえば喋る訳にはいかなかった。
仕方ないので無言で頷いて私は相手に向き直る事になった。

「ルールを確認する。まず今回杖の使用はなし。ただし魔法は使用可だ。魔法具もあり。次に刃物等、武器の使用は許可する。次に、相手を死に至らしめるのは御法度。破ればそれなりの罰則を与えるからな。最後、勝敗は先に喋ったら負けだ」

喋ったら負けって…それで例の約束をしてきた訳ね。
私はハンス室長の説明に漸く納得した。

「では試合始め!」

パルスさんとハンス室長が自身の結界を作って離れたところで開始の合図が言われた。

先ずは、様子見かな。相手に歩きながら向かって観察をする。相手もゆっくりこちらに近付いて来た。そして互いの距離が20メートル程になった時に一度足を止めた。
お互いじっと見つめて観察。隙があるか見ている。

お互いにパーカーを着ていてそのフードを被ってしまっているから髪の色さえ分からない。性別もこの体格では判別は不明。本当に、特公のやり方は凄いと思う。本当情報が読み取れない。

それにしても…

隙がない。
当然ハンス室長が育てたんだろう、魔力が身体に巡っているのが分かってしまう。

ふと、先に相手の左手が僅かに上がった。

パチン パチン パチン

指を三回鳴らした音が僅かに聞こえ、相手が何か仕掛けてきたのが分かった。恐らく魔法発動の癖だ。私は身構える。

ボウッ

三ヵ所、それも私の足元から左右と前に炎の柱が上がった。

(うわっ、やるなぁ)

いきなりの大技に相手の魔力の高さが伺える。私は唯一の逃げ道である後ろに避難する。
当然、相手の思惑はある訳で、背後にはさっきまで前にいた相手。その右手にはサバイバルナイフが持たれていた。

キィイン

私は袖の下に隠していた短剣で応戦した。ギリギリと音を起てる刃物同士に、結構な力が加わっているのは明らか。普通子供にこんな力はない。とすれば、やっぱり魔力で強化されている。ふと相手の左側ががら空きだった。魔法使用は左手でしていた。ナイフは右、右利きね…

クイッと私は刃物を引いて相手の勢いをいなして崩す。

「!」

右にばかり力が入っていた為、それで左右両方がフリー状態。
貰った。
右足に力を入れて一気に左足で相手の右脇腹目掛けて蹴りをふる。
ゴッ

手応えあり。普通ならこれで肋の二、三本はいってる筈。だけど相手は魔力で身体を覆っているなら大した怪我はしていない筈なんだ。だから私はそのまま相手の腕を掴み宙へ放り投げる。

案の定宙で身体を一度捻って体勢を整えて着地しようとした相手。すかさず私は口笛を吹く。面をしていて手が使えないのでコントロールは難しい為必然制度は劣るけど別に殺すわけじゃないからいい。

ピュウ

足元は草地。相手が着地したと同時に草が僅かに伸びて足首に絡まった。よしっ。一瞬動きを止めた相手と決着をつけるべく私は一気に距離を縮めた。


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