湿原漸く明るい場所に出たと思いきや、試験官から発された言葉は妙に不吉だった。
「だまされると、死にますよ」
ヌメーレ湿原。通称"詐欺師の塒"とは、また嫌な名称だった。
湿原に生息している生物は、獲物をあざむき補色するらしい。そして早速の騙しに合った私達は、ヒソカの狂気によって救われた。
試験官が偽者だと言った男はその台詞を言ったままに飛んできたトランプを顔面で受け止め、傍らにいたその猿に似た生物すら一瞬で死に至らしめた。
「あの猿死んだふりを……!?」
受験生からは騙してきた生き物に驚きの声が出ていた。ヒソカはそれに対して涼しい顔で本物の試験官について考察を語る。サトツさんは本物で、ハンターなら受け止めて当然な攻撃何だとか。
「次からはいかなる理由でも私への攻撃は、試験官への反逆行為とみなして即失格とします。よろしいですね」
「はいはい
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」
試験官にまで攻撃をしたヒソカ。それに対してサトツさんは注意を普通に言ってのけている。
(あのヒソカに…流石…)
そんなやり取りが行われているのを私は感心していたけれど、周りにいた受験生達は簡単に殺しや、攻撃を仕掛けていたヒソカに対してかなり動揺をしていたようだった。まぁ、それはそうだ。私もヒソカのその性格を知らなければ気が気じゃない。それにしても、私も大概図太い神経を持ってしまった事にちょっと落ち込んだ。だって、人一人目の前で殺されたのに、それでもまだこの試験を辞めようとは感じていないんだから。いや、でもヒソカは怖くて近付きたくないよ。
「それではまいりましょうか。二次試験会場へ」
再び進み出したサトツさんに、私ははぁ、とため息をつきそうになるのを堪えて何とかゴン達と一緒に走り始めた。
サァァァ…
暫く走った所で霧が出てきた。
「霧…か…」
「みたいだな」
確かここでイベントがあった筈。ぽつりと呟いた私に対し、キルアの同意の声がした。あれ、さっきまで私の前を走っていたと思ったのに、いつの間に並んだんだろう。ゴンとキルアは私を挟む様に走っていた。
「ゴン、ユラギ、もっと前に行こう」
「…ああ、そうだね」
「うん。試験官を見失うといけないもんね」
なるほど。キルアの言葉の意味にそれでかと納得して私は相槌を打つ。ゴンは、まだ意味が分かっていないようだけど。
「いや、そんなことよりヒソカから離れた方がいい」
「?」
「だな」
分かっていないゴンに、キルアは冷静にその考えを言ってきた。私もそれに頷いた。
「あいつ、殺しをしたくてウズウズしてるから」
「!」
「霧に乗じてかなり殺るぜ」
キルアのこういう勘は凄いと本当思う。ゴンは驚いてキルアを見返していた。私はキルアの事情は分かっていたので黙って走る事に専念した。
「レオリオー!!クラピカー!!キルアが前に来た方がいいってさー!!」
キルアの忠告に取り敢えず後ろの二人にもと叫び出すゴン。その後ろの方ではレオリオ達の声が聞こえてきて…私はついそれを見て笑ってしまう。
「わはっ。流石だなぁ」
「何がだよ。緊張感がない奴らだなー」
キルアはゴン達のやり取りに毒気を抜かれてがっくりしていた。
「でも、いいよね、ああいうの」
「…別にっ」
笑いのツボが収まって最後とばかりにくすりと笑って言った感想。原作を読んだ時には面白いと思っただけだけど、実際見ると羨ましいとさえ思ってしまう。
キルアもこんな気持ちじゃないかと思って聞けば、否定の言葉が返ってきたけど、その頬は僅かに赤くてただ照れているだけだと分かる。
「キルアってば素直じゃないな」
「ユラギの癖に生意気」
「むっ、失礼だな」
「言ってろ」
生意気な少年だとは思っていたけど、そんな所はまだまだ子供っぽくて、可愛いなんて思ったが、やっぱり、キルアだった。結局何時もの様に馬鹿にされて話が終わった。
奇術師の気配後ろの方で、叫ぶ声が聞こえた。
試験ごっこという残虐な殺人の始まりの合図だった。
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