〜side Gon
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キリコ達親子にザバン市まで送って貰った後、キリコに会場まで案内されている途中、道端でうずくまる少年を見付けた。

「う〜」

なんだか頭を抱えて唸っている様子に、心配になった。

「ちょっとオレ見てくるよ」

「あっ、待てオレも行くぜゴン」

「仕方ない。放っては於けない」

レオリオとクラピカもそれに気付いていたらしく、直ぐに同意してくれた。キリコは何も言わなかったから、多分良いって事だろう。

「ねぇ、君…「そっか!師匠に聞けば良いんだ」
「うわっ!」

声を掛けようとした瞬間、何かを叫んで立ち上がった少年。に、肩を叩こうと手を伸ばしていたレオリオは驚いて尻餅をついてしまった。

「す、すみません!」

直ぐに状況を理解したらしいその子はレオリオを見て、オレより早く声を掛けていた。立ち上がったその子は頭一個分小さくて、きっとオレより年は下だろう。

「大丈夫?レオリオ」

「ああ、ちょっと驚いちまっただけだし、大した事ないぜ!」

笑って答えたレオリオに、平気そうだと分かり安心する。と、その子も一瞬固まった様だったけど直ぐに体の力が抜けたようだ。

「それにしても、君大丈夫?」

「えっ?」

「うずくまってたから、具合でも悪いのかと思ったんだけど」

オレとレオリオのやり取りを見て何でもなさそうと判断したクラピカは、さすがに冷静で始めの目的だったこの子の体調を聞いていた。

「えっ、ああ実はハンター試験会場に向かっていたんだけど、肝心の合言葉を聞き忘れて困ってた所で…」

「えっ!君もハンター試験の受験者なんだ!?オレ達もだよ!」

その子の答えを聞くと、今度はオレが驚く番だった。まさかこんな小さい子が、ハンターを目指すなんて…でも偶然だけど仲間に出会えた事が単純に嬉しかった。レオリオやクラピカも凄く驚いた顔をしていた。
そして思わず口走ってしまった言葉に、一瞬その子は目をしばたかせて(…あ、何か女の子見たいだなと思ったのは言わない方がいいかな)嬉しそうに笑った。

「そうなんだ!!良かったぁ。俺と同じ年位の子供も居てなんか安心したぁ」

うわ、笑うと犬みたいだという考えが浮かんで来てしまった。なんだかくじら島に置いてきた動物達を思い出させる印象に、思わず頭を撫でたくなってしまった。

「ゴン、そっちの子も一緒に来るのか?」

すると、今まで黙って見ていたキリコが声を掛けてきた。心なしちょっと嫌な顔をしているのはどうしてだろう?せっかくだし、困っている様だから、一緒に行くのは当たり前じゃないかと思うんだけど…

「えっ、ダメなの?」

思わず聞き返したオレに、キリコは黙ったままだけど、雰囲気で分かる。クラピカとレオリオも何も言わないって事はきっと理由が分かってるんだ。なんで…問い掛けようと口を開き掛けた所で男の子が、口を開いていた。

「あっと、俺の事ならお構いなく!そちらのナビゲーターさんの審査もなしに同行なんか悪すぎるし?」

「!」

その言葉にキリコの空気が驚きに変わったのが分かった。さっきから、どうしても分からない事ばかり起きるなぁ。すると男の子はごまかす様な笑いを浮かべると、この場を去ろうと後退りした。

待って、

「待ちな、あんた名前は?」

言いたかった言葉は、キリコによって発せられた。振り返った男の子はおっきな目を見開いて、警戒している。
キリコを見るとニヤリと言った感じに笑っていたし、一体何がキリコの機嫌を取ったのか分からない。

「えと、ユラギ…だけど」

「いいぜ、ユラギ。気に入った。試験会場まで案内するぜ」

「ほんとに!?」

いきなりの変わり様にユラギ―――って名前なんだ――はやっぱり驚いていた。けどその後、一緒に行けると分かり、嬉しそうにお礼を言っていた。
だけど何だろう、オレも凄く嬉しかった。それはユラギとは初めて会うのに、ユラギ自身の匂いの中に、なんだか懐かしい匂いがしたからだ。


懐かしい匂い

匂いのもとは赤ん坊の頃ずっと一緒だったジンの匂い


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