一人旅
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「嬢ちゃん、迷子かい?」

「いえ、お使いです」

あれから何度となく声をかけてくる大人に、いい加減面倒臭くなった。

そうだ、それもこれも、この格好が良くないのだ。
長く伸びた髪に、腰巻き状態にされた布はスカートだから、まず男には見えない。
嫌、正真正銘女なのだから良いのだけど、何分、子供が一人で歩っていると目立つし、女ならと目をつけてくる輩もいる。それで苦い想いをした経験が、嫌でも思い出されてしまう。

チャリ

理不尽に持たされた旅費が音を発てる。

「よし」


***

「ありがとうございました」

子供の客が一人で来たのに、普通に対応してくれた店員さんの声を背に店を出た。
ぐっとキャップを目深に被りながら、試験会場のあるザバン市へ足を向けた。

「ボウズ!肉が安いからどうだ?」

快活に笑う肉屋のおじさんにかけられた声は自分を男だと認めるもので、内心笑む。

「ゴメン、俺急いでるから!」

男の使う言葉遣いでその場を凌ぎ、市街地を駆け抜ける。
そして、ふと思い返す。
そう言えば…
確かザバン市に行ったとしても、会場は定食屋の地下だった筈。そして会場へのエレベーターには合言葉があった…

(やばい!覚えてない!?)

さっと血の気が引く私は思わず、その場で頭を抱えてうずくまる。
なら、ドーレ港で師匠の子を待伏せる?
いやいや、そもそも師匠の子達は試験開始のギリギリできた筈。試験の日付って…

ぐるぐる思い返した、原作の記憶。まさかの関わりフラグが起ってしまって慌ててしまうのも仕方ない。
だって私は危険な目になんか遭いたくなかったんだから!HUNTER×HUNTERっていう漫画は確かに好きだった。だけど、この世界はあまりに危な過ぎる。一般人だって、キメラアント編に突入すれば、まず死亡フラグだ。
イレギュラーな私なんかは、きっと死ぬ。だからまず主人公には関わらず、いつか日本に渡って平和に過ごすのが夢だったのに!

はぁ

なんでこんな事に

それもこれも全部は師匠の…
師匠…?

「そっか!師匠に聞けば良いんだ」

ばっ、と立ち上がった瞬間
「うわっ!?」
上がった声。

思考の渦に嵌まっていた私はすっかり道を行き交う人の注目の的だった。
そんな中、奇特にも私を心配して声を掛けてくれようとした人がいたらしく、急に立ち上がった私はその人を驚かせてしまったみたいだった。

「す、すみません!!」

急いで振り返ると、案の定驚いて尻餅を着いた黒いスーツに身を包んだお兄さんがいた。


偶然の出会い

あれ?どっかで見たことある人だな。


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