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「ぅっ、うあー」

目の前で、盛大に泣き出したナルトに、ああ、護ってあげたいな、と思ってしまったのは、ナルトもまた、私の大切な人になってしまったからに他ならない。


エキストラ


「ナルト!」
「イロハ、また来たのかよ」

「えへへっ、だって暇だし?
私同年代の友達ナルトしかいないもん」
「あっそう」

あれからナルトとは意気投合!
ナルトもカカシさんや火影様に修業してもらったり、本を読んだりして過ごすと言っていたから、なら私も!と言う事で二人で修業を見てもらいつつ、本を読んだり、暗号に関して議論したりしている。
この世界のナルトはやっぱり頭が良いらしい。
私が最初に普通じゃないと話していたので、それもあっさり受け入れてくれた。
話しが合って、自分を隠さなくていいなんて、こんなナルトの隣に行かないなんて、勿体ない!

ナルトは九尾について、まだ教えてはくれない。もしかしたら知らない可能性もあるから、私もあえてそこは聞いてない。私も前世の記憶があるだなんて言ってはいないし、お互いにまだ秘密はもってる。だからもし、その秘密を打ち明けるとすれば、ナルトが私に教えてくれた時だと考えてる。だって、まだこの居心地の良い場所を失いたくないから。

そんな訳で、今日も目下ナルトと勉学と修業に励み中な訳です。

余談ですが、ナルトはちょっとツンツンしています。なんでかはよく分からないけど、でも私が行っても拒絶しないし、今みたいに私が素直に言葉を言えば、ちょっと嬉しそうだったりとするので、見ていて飽きません!
むしろナルトと一緒なら楽しさ倍増!私バンザイ!


「ねぇねぇナルト、禁書って読んだ事ある?」

「え?そりゃあるけど」

「ほんと!?私やってみたい術があるんだけど、どうしたら読めるかな!?」

私が読める術書は公共図書館にある物で、禁書なんかは上忍以上か火影様の閲覧許可証がないと入れない場所にある。
ナルトの部屋には、私の読んだことない他国の本何かが置いてあるし、私以上に物知りなナルトならもしかしてと思ったけど、やっぱり!

「あと、じいちゃんに頼めば読まして貰える」

「ほ、火影様に?」

そりゃあ、そうなんだけどね!私みたいなただの一般人が、しかもまだ2歳児が火影様に謁見できる筈ないじゃないか…

「ナルトずるい…」
「はっ!?」

火影様はそりゃあ、九尾なんてものを入れられ、大人の恨みを背負って生きていく英雄は可愛そうで仕方ないでしょうとも!
だけど、こんな子供に禁書なんて危ない物を簡単に読ませるなんて!
とは言っても、ナルトが私以上に里内で制約されているのは痛い事実だ。だから、八つ当たりなんてこんな事言ったって仕方ない。
ああ、でも禁書…

「カカシさんにでも変化してみようかな…」

それなら上忍だし、入れる筈。持ち出し厳禁な術書を速読暗記すれば、どれ程量があるかは分からないけど、大抵一日あればなんとかいける、と思う。

「イロハ、待った!それだけは止めろ、な?いい子だから」

「むぅ、何よナルト。私よりちょっと早く生まれたからって子供扱いしないでよ…」

ナルトの急な態度の変わりように疑問を持つけど、でもそれよりナルトにまで子供扱いされている事にムッとしない方がおかしい。

「いいから、カカシに変化した所で変な女に言い寄られて、身ぐるみ剥がされそうになるのが落ちだって。良くてその女に気がある男からリンチ受けるくらいだぞ?とにかく、良いことないから、止めろ」

「うっ…確かに。うん。ナルトがそこまで言うなら止める。ああ、でも読みたかったな…上忍になるまで諦めよっかな」

妙にリアルな情報だけあって、きっとナルトもやった事があるのだろう。録な目に合わなかった、そういう事。一先ず諦めた私にナルトはあからさまにほっとしたようだった。

「そんなに読みたいなら、俺がじいちゃんに頼んでやるからさ、そんなに落ち込むなよ」

と、そこで天のようなお声。いやナルト様の言葉。

「えっ!?いいの!?」

まさか、自分で何もしなくていい展開に私はびっくりしてナルトに詰め寄った。

「うっ…、ああ、良いよ」

若干引いてしまったナルトに、ああ、ゴメン、なんて言いながら離れた私。心なし、ナルトの顔が赤いのは、これを言うのに緊張したからなのだろうか。

「やったぁ!ありがとう!だからナルト好き!」

思わずナルトに抱き着いてしまうのは、やっぱりお兄ちゃんの影響だと思う。
それに、ナルトは背格好が一緒だから抱き着きやすいから。

「べ、別に友達なんだから当たり前だろ!?だから、離れろって」
「うん。ごめんね、びっくりさせて、つい嬉しくて…
ふふっ。でも漸くナルトから友達って言ってくれたね!」

「え?」

過度なスキンシップが苦手なナルト。でもそれはきっと、大人から虐待を受けていたからに他ならないと思う。突き放すような言い方も、きっと私を遠ざける為。

優しいよね。なんていい子なんだろう。

「ほんと言うとね、ちょっと寂しかったんだ。私だけがナルトの事友達なんだと思ってるんじゃないかって…でも、そうじゃなかったんだね?私ナルトの隣にいてもいいんだよね!」

確認のようで、確信した言葉はナルトが逃げないようにするため。じゃないと、またいつ言って貰えるか分からないから。

「それも当たり前、だろ。何だよ、いつも勝手に来て、勝手に俺の領域荒らしていく癖に、何で今更んな事聞くんだよ」

ナルトの拗ねた言い方、可愛いと思う。やっぱり、抱きしめたくなっちゃうけど、あんまりやると、嫌がらせになっちゃうから、ここは自重。

「あはは、だって自信なんて無かったし。私はナルトが優しいからここに来ても追い出さないし、否定もしないだけなのかと…」

「バカやろう。鈍感。ちび」

「やっ、ひどっ!しかも最後のナルトだって変わらないよ!」

散々な悪口に、そんな子供みたいな、(ってナルト子供か)言われように私だって素直に凹むよ。大人だからね!

「お前、そんなことで、今まで遠慮してたのか?」

「えっ?なんの事?」

確かに、ナルトに抱き着くのは遠慮してたけど…
ナルト、嫌がるし、それの事以外だと思い至らなかった。
だから、素直に聞き返せばナルトはあからさまにため息をしやがった!何、私はこんな子に育てた覚えはありません!
って、育てられた覚えもないだろうけどね。

「禁書。なんで俺にじいちゃんに言って欲しいとか、会わせて欲しいとか言わなかった?」

「えっ?それって我が儘じゃん?そんな事ナルトに迷惑掛けられる訳ないじゃん」

「はあ?」

かなりの驚きように、私もびっくりする。

「私、何か間違った?」

「俺がいつ嫌だって言ったよ?」
「ん?んー」

思えば、最初にナルトに会った日に、いらないとあからさまな拒絶の言葉を言われて以来、ナルトはなんだかんだ言っても本を勝手に貸してくれたし、うざがらないで話してくれていた。でもそれは、仲間意識から優しくしてくれていると思っていたし…でも私は友達になりたくて今日まで通いつめていた訳だし。

「言ってない」

「俺は、嫌なら嫌ってはっきり言う。だから、イロハが我が儘だって言ってる事だって、俺が出来る事なら適えてやりたいし、出来なきゃ一緒に考えてやりたいって思うんだけど、それって俺の我が儘?」

「う、ううん!全然!むしろ凄く嬉しい!ありがとうナルト!私、ナルトが友達で本当に良かった!」

ギュッとナルトの手を嬉しくて、握れば照れるナルト。
ナルト、やばい!カッコかわイイ!
もしや、私よりナルトの方が大人なんじゃと思ってしまった。不覚。でも、嫌じゃない。ああ、私は妙にプライドがあったのかもしれない。誰にも頼らない方がカッコイイし、迷惑を掛けないからって。でもそれは、他人と一線引いてしまう物だったみたいだ。
でも、ナルトみたいに言ってくれる人なんて今まで居なかったから。本当に。漫画や恋人同士のようなものの中だけの話しだと思っていたから。だから、嬉しい。
ナルトは私の欲しい言葉をくれる。私を変えてくれる気がした。

「ナルトも!私に何でも言って?ナルトが望むなら、手伝う!嫌なら嫌ってはっきり言うし、間違ってるようなら、全力で止めてあげる」

「イロハ、それ、本当に意味分かって言ってんのか?」

真剣に返す私に、ナルトは呆れながら聞き返してきた。何さ、大人ぶって!

「ナルト、私にたいして失礼!ちゃんと分かって言ってるに決まってるでしょ!?友達より親友って事よね!」

「…やっぱり、わかってない」

「何か言った?」

ぼそり、ナルトが何か言ったけど、私はナルトとまさか人生初の親友になれるなんて思ってなかったので、嬉しさのあまり浮かれて、上手く聞き取れていなかった。

「いや、何でもねぇよ」
「えへへ、これからも宜しくね、ナルト」
「ああ」


笑って返してくれたナルトは、子供なのに、妙に大人っぽくて、きっと将来いい男になるんだろうと思う。だけど、今はまだ里ではナルトを良く思わない大人が大半だ。きっとナルトが成長するまでみんなそれに気付かないと思う。
だから、それまでは、傍で護ってあげよう。親友として、成長を見守って、行こう。
私の異常を受け入れてくれて、欲しい言葉をくれた大切な小さな親友。いつか私を再び拒絶する日がくるまで、それまではどうか、そのいっぱいに背負う大きな期待の背を支えさせてね。


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