エキストラ一般企業で働く20代のOL、特別趣味はないけど、あえて言うなら漫画好き。携帯で二次小説を読むの何かも大好きで、良く妄想していた。トリップ小説なんかに出会った時には、ああこの漫画にトリップしてみたいな…なんていい年して考えたりもした。
だけど実際そんな事ありえる訳ないし、私みたいな平凡、地味の根性なしには仮に行ったとしても、アクション漫画なんかでは生き抜けるなんてできない。
だから、憧れだけで十分。妄想だけで満足している。
なのに、、私はこの平凡人生に訪れた突然の死を境に、転生トリップと言う特質を得てしまった見たいだった。
エキストラ先ず始めに転生したのは、私がトリップ小説にはまった最初の世界のNARUTOだった。転生した時はまだ母親のお腹の中だったが、九尾が出現したと聞いた時に気付いて、産まれて見た建物に確信した。
親は木葉の忍者で、やはり私もそれにならわされた。聞いた事の無い姓だったし、原作だと周りにいる忍者だろうなと考えて、だとしたら、真っ先に死ぬ確率が高い。
かと言って、原作キャラと行動を共になんて、死亡フラグ起てる勇気は生憎持ち合わせてなかった私は、とにかく修業をする事に。
1歳で漸くハイハイやら歩くなどが出来てから、私は親の目を盗んでは忍術書を読み漁った。
どうやら上に年の離れた兄がいて、それなりに優秀らしい。良く自慢していた。
え、誰かって?もちろん皆知らない名前だよ。
たまに帰ってきては、私を構って外に連れ出してくれるし、忍者仲間に合わせてくれたり、うん。私はお兄ちゃん好きだな。
「イロハは可愛いなぁ…おっきくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになりたいなんて言ってくれないかなぁ」
「うわっ、でたよシスコンが。お前そんなんじゃ彼女できないよ?」
「いーの!今は。俺はイロハが結婚するまで護ってやるんだから」
「げぇ。イロハちゃん可哀相だろ。絶対反対すんだろ?お前」
「当たり前!俺より弱い奴に大事なイロハをやれるか!なぁーイロハ?」
「あうー」
まさか現実にこんな親バカならぬ兄バカに出会うとは思わなかった…
特別彼氏を作った事がないから、分からないけど、実際こんな兄の元で育つのは大変かもしれない。などと思いながら、辺りをキョロキョロする。
ああ、もうどこもかしこも忍者、忍者。
待機所とはこんな所だとは思っていたけど、まさか保育室まであるとは、流石忍の里。それでも、基本待機所内なら行動自由なのは、きっと忍だらけだからかもしれない。いなくても気配で察知出来るんだろうな…
そうだ。
ピンとそこで閃いた私。修業にはうってつけのある方法。
「にいちゃ!」
舌ったらずで喋りにくいが、今は我慢。それよりやるべき事があるから。
「なんだい?イロハ」
優しく笑う兄、は世に言うイケメンな様で、周りのくノ一からは密かに人気がある見たいだった。ちょっと自慢だったりする。
だけど、この後の私のお願いを承諾する顔はちょっと止めた方がいいと思うのは、私だけだろうか。
「イオハ、おいこっこしたい!」
自分で自分の名前言うとかっ!恥ずかしさで死にそう!
でもお兄ちゃんにはこの方がいいらしく、私って言うようには教えて貰えない。
「うわっ何この生き物、可愛い」
「だろっ!?もうぎゅっとしたくなるんだよ」
「にいちゃ!」
ちょっと、ちっちゃいからってそこまでデレなくてもいいんじゃないかな…
忍者仲間のお兄さんも巻き込んでしまったらしいお兄ちゃんに、若干呆れた。うん。子供好きは嫌いじゃないよ?でもはっきり言って、私は見た目は子供でも精神年齢子供じゃないので、自分にそれを向けられても困るしかない。
「ああ!鬼ごっこだね」
「うん!イオハかくえゆ」
「分かった!建物からは出ちゃダメだぞ?30数えたら探すからな」
「あい!」
私が歩き始めたばかりで走れないのを知ってるから、隠れる時間が多いのは仕方ない。
でも良い修業だったりする。
だって、気配を消すのと、感知するのが出来れば弱くても逃げ切れる筈。今は無理でもスピードと体力は必ずつけよう。
忍として生きると決めた訳ではないけど、この世界で忍の家系に生まれてしまったからには、いずれ危険に曝されるのは必至。
主人公じゃない私は、いつ死んだって可笑しくないのだから、強くなろう。
***
「あれ、イロハちゃん今日は一人?」
「カカシさん!おはようございます」
あれから一年。私は2歳になった。こちらの世界は身体の発達が速いのか、私は結構走り回れるようになった。密かに筋トレを行っていた事もあると思う。
もっとも、まだこの世界の同年代とはまだ遊んだことがないので分からないけども。毎回お兄ちゃんにくっついて上忍の皆さんに遊んで貰っていれば必然かもしれない。
そんな中で、遂に、原作に関わるキャラに会った私は、せっかくなのだからと、なけなしの勇気を振り絞って話しかけていた。
「ん!おはよう」
「えと、今日はカカシさんにお願いがあって」
せっかく出来た人脈を活かさない手はない。なんせあの元暗部でいずれナルト達の先生になる人だもの。独学より教えて貰うならやっぱり、実力のある人でしょ?
「それって、ユウには頼めないこと?」
「お兄ちゃんだと危ないからって、反対されるか、ちゃんと教えてくれないと思うんです!」
2歳児がこんなにしっかり話すのは、はっきり言って、私のいた世界じゃ絶対いない。でも、シカマルやイタチの様な幼くして頭の回転が良かったり、実力があったりする世界だから、別に気にしちゃいられない。
第一、私はどんなに頑張った所で主人公ではないし、その陰ながらの応援しかできないエキストラなんだから。注目なんてされはしない。
「分かった。話し位なら聞くよ。承諾するかはそれからだよ」
「はいっ」
さすがカカシさん。優しい人だ。こんな幼児の話しを聞いてくれるなんて、いい人っ!
「えと、そしたらお耳貸して貰えますか?」
周りに人はいないけど、なんせ忍だらけのこの場所だ。いつ誰からお兄ちゃんに伝わるか分からない。なら直接カカシさんに耳打ちなら内緒にできる。
「ん、いいよ」
屈んで耳を寄せてくれたカカシさんに感謝しつつ、本題を切り出す。
「あのね、忍者の修業をつけてもらいたいの」
「!」
隠れた半分の目が見開かれるのを見て、やっぱり驚くよねぇ。と内心で苦笑。この年じゃ友達同士で忍者ごっこをしてれば良いもんね。それも女の子な私がそれを言うのもおかしなもんだ。
忍は里のヒーローで、柱で、稼ぎ頭だ。
子供からするにはきっとヒーローへの憧れになるんだろうけど、私は違う。
この世界、生き抜く為の力が欲しいだけ。里の為、誰かの為じゃない。自分の為だ。
カカシさんとは、何より正反対な位置にいる私だから、きっと脇役すら似合わない。
「んー、理由は?」
「ここで、生き抜く為です」
隠し事は得意だけど嘘は苦手だから、私は正直に言う事にした。
しっかりと口に出した時の私は真剣だった。カカシさんがどう思おうと、それは私の根本的な所がそうだと決めている以上これは、揺るがない。
「そうか…」
何を言われて、質問されたらどうしようとか考えていたのに、カカシさんは意外にも、納得してくれた様だった。しかも、なんだかその目は哀しみを宿していたから、胸が、ズキリとした。
「ごめんなさい」
「えっ?」
突然謝った私にカカシさんは、驚いて聞き返してきた。
「私、カカシさんのこと考えず言ってしまいましたよね?だから」
生前もこの事では色々悩んだりした。私はどうやら一言が妙に人の心を傷付け易いようで、私にそんなつもりなくても相手を落ち込ませる事があった。
だから、言わなければ良かったと思っても、もう撤回なんかできはしない。だから、謝って、少しでも軽くなって欲しい。
思い気持ちを引きずるなんて、私は嫌だから。
「いいや、俺こそゴメーンね。心配かけさせるつもりはなかったんだけど…イロハちゃんは、随分大人だなと思っただけだよ?
んーそっか。ユウには確かに言えない、かな?イーよ。但し、テストを受けて貰うから」
「は、はいっ!ありがとうございます!」
まさかの承諾に、嬉しくて私はカカシさんの屈んで膝にあった手を握った。
「こら、まだ本当に教えるなんて言ってないでしょーが」
「はい、先生」
「ふぅ、まあ、いっか」
苦笑するカカシさんに、私は元気に返事を返す。これで一歩、前に進める。
だけど、私はまだこの時、カカシさんのあの表情の意味を知らなかったから、はしゃいでいられた。
そして、これが私の目標を大きく変えて行く事に繋がっているなんて、まだ知るよしもなかった。
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