えーと、我が家に小人二名が住むことになりました。 めでたしめでたし。 いやいや何もめでたくねーよ。 「えーと…」 ぐりんと首を回して振り返ると怯えたように縮こまる小人とそれを庇う小人。 いやいや小人じゃねーよ、つか怖くてごめんね! 先ほどまで徹夜明けでレポート作成してた私の家のインターホンを鳴らしたのは、ご近所でよくお世話になっている逢沢さん(母)。 お世話っていうのはほらあれ…貧乏学生の食事的な意味で。 さ、最近はバイトで稼いでるしお返しもしてるし! 断じてニートでは、ない。 しかし奥さんとの交流はあっても息子たちと仲が良いかと聞かれたら…微妙。 子供は嫌いじゃないけど如何せん接し方が分からん。 いやほら、最近のお子様は見た目と中身が釣り合ってない子が多いじゃないですか。 愛らしい見た目に騙されて以前ひどい目にあったのがトラウマとか死んでも言えない。 そんな感じで極力避けてたからな…。 今になってそのツケが回ってくるとは思わなんだ。 まぁ突然押しつけられ有無を言わさず置いていかれたこの子たちのが大変だよね、私より…。 少し距離を開けている小人を見やると、あれれおかしいな何だか小型犬に映ってきたぞ。末期か私よ。 「…こうしてても埒があかないや。私は宮越紗弥、ピチピチの女子大生!短い間だけどこれも何かの縁だしよろしくねっ」 出来るだけ柔らかく笑うと、小人は真っ黒おめめをぱちくりさせ、怯えていた小人(小)がこちらにてとてと近寄ってきた。 な、なんだなんだ。 小人(小)は私の前でピタリと止まる。 「あい沢駆ですっよろしくおねがいします、紗弥おねーちゃん!」 えへへー、とはなんてあどけない笑顔なんだろう。 お花は幻覚じゃないよね現実だよね。 え?ズドンッて音がした? それはきっと天使が私の心臓をカノン砲で撃ち抜いた音だと思います。 よし駆くん=ピュアエンジェル。インプット完了。 「(なにこれ禿げ萌える)う、うんよろし…」 「待て駆」 ほわほわした空気に癒され勢いあまって駆くんを抱きしめようとしたら。 駆くんの前に小人(大)が立ち塞がり、私に鋭い目を向ける。 「兄ちゃん…どうしたの?」 「その人のオーラが気持ち悪いから不用意に近づくな」 「まさかのオーラ!? ていうかおまっ…想像以上の辛口だね!!」 幼い外見に似合わずキツい物言いは私を拒んでいて、分かってはいたけどかなり傷付いた。 そ、そんなに警戒せんでも…。 「だがその程度で怯んでたまるかってんだちくしょーーーー!!!!」 「う、ひゃあ!?」 「っ!?」 抵抗する暇さえ与えず腕を伸ばして小人どもを引き寄せた。 「せっかく一緒に住むんだからさ、んな悲しいこと言わないでよ…」 心細さで胸をいっぱいにしているであろう小さな体をぎゅうぅと抱きしめ、虚勢を剥がしていく。 声音が沈んだ様子に気付いたのか、小人(大)は慌てて弁解しようと口を開いた。 「あ、いや、そんなつもりは―――っ」 そう狼狽えた刹那、私の目は怪しく光ったのを純粋な彼らが知るはずもなく… 「はっ!馬鹿め引っ掛かりおったな!くらえ高速くすぐり〜!」 「きゃはははっく、くすぐった!」 「ちょ、ま、っ!」 「そーれこちょこちょ〜」 一瞬の隙を突いて脇腹をくすぐってみると、こしょばそうに身を捩る可愛い姿に思わずキュンとしたのは内緒だ。 笑い疲れて肩を上下させている小人の背を撫でてやりながら告げた。 「君たちが寂しくならないように私も頑張るから、仲良くしようよ。駆くん、傑くん」 ねっ?と目線を合わせて笑うといきなり駆くんがお腹にダイブ…!? 「えへへ、ぼく紗弥おねーちゃん好き!」 「(鳩尾が…!)わ、私も駆きゅんが好き…!げふっ」 痛さと嬉しさが入り交じった何とも複雑な感じに陥っていたところ。 「……わ…た」 「?どうした傑くん」 何やら小さく呟いていた彼を不思議がる。 すると彼は顔を赤く染めてキッと睨み上げてきた。 怖くないもん可愛いだけだぜそんなの! 「っだから!悪かったって言ってるんだよ!」 「…へーぇ、ふーん…」 「に、にやけてんな気持ち悪い!」 「いやぁだって…ねぇ駆くん?」 「?ねー!」 「駆、お前分からないのに返事をするな…ってうわ!?」 赤くなって焦ったりツッコミをいれる彼にいてもたってもいられなくなり、また二人を抱き寄せる。 「しょうがないよ傑くんたちが可愛いんだもの」 だらしなく緩んだままの笑みで答えれば、俯いている彼はまた何か呟いた。 「ん?なーに?」 「何度も言わせんなっ …その、呼び捨てで、良い。名前…」 「あ!ぼくもぼくもー!」 あぁもう本当に 同居人が可愛いすぎて生きるのが辛い! (けどそれ以上に幸せ!) 「――――駆、傑!お前ら二人して今日から私の嫁なっ!!」 「あ、それは無理」 「傑てめえ唐突に空気無視すんなよぉぉぉぉぉぉ!!」 |