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お分かりいただけただろうか…。
「あっ!ジダンが地団駄!」
「イエース!正解、おめでとう!」
「………」
私の愛する奈々が、ドン引きしているという光景を――――。
「な、奈々?あのね、話を聞いてく」
「千鶴!!どうして何も言わなかったの!!」
「え。ご、ごめ、私もまさかここまで寒いダジャレだとは思わなくて、」
終始微妙な顔で口を閉ざしていた幼なじみが、私の方を向くなり物凄い剣幕で掴みかかってきた。確かに朝は祐介と会うから先に行くねと連絡したが、サッカー同好会にいるねとは言わなかった。心配性な彼女のことだから、私を探してくれていたんだろう。それで疲れていた所にあのしょうもないダジャレ。あれを食らわされたら文句の一つも言いたくなりますよね分かります。
と、甘んじてお説教を受けようとしたのだが。
「きっと脅されたのね!?絡まれて、無理やり連れて来られたんでしょ!?可哀想に…早く見つけてあげられなくてごめんね?」
「うわーいその発想はなかった!!!!」
申し訳なさそうにこちらを伺ってくる私の親友ちょう可愛い…じゃなかったものすごく話が飛躍している。気遣わしげに頭を撫でてくれるのは嬉しいけど、一応お世話になる部活だし誤解は解いておかねばなるまい。名残惜しいが奈々の手から離れる。
「違うよ。ここには自分の意思で入ったの。冬からずっと決めてたんだ」
「でも…こんな、怪しいところ…」
怪しいって言われてますよ先輩方、先生。否定はしないけど。
そしてクイズに正解してやんややんやと持ち上げられ、ペースに流されるまま陽気に入部届へサインする従兄に白い目を送る。だから少しでも疑うことを身につけろと言ってるのに。
「奈々、百聞は一見に如かず、だよ。ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、私を信じてみてくれない?」
私より少し背の高い彼女を見上げて告げる。
しばらくの沈黙の後、奈々は渋々と言った感じに入部届の記入を始めた。駆の分まで疑り深い奈々があっさりと引き下がったことに驚きつつ理由を尋ねれば、
「入学式前に入部させたり、やってることも意味不明だし、腑に落ちない点も多いけど…。
でも、千鶴がそんなに目を輝かせてるの、久しぶりだね。だから、千鶴を信じるよ」
と、茶目っ気たっぷりに一言。
女神か。むしろ天照か。
そんな嬉しいことを言われては、ますます惚れざるを得ないじゃないか。
感動をハグで表そうと意気込めば、タイミング悪く左肩を掴まれ制される身体。
「素敵な友人ですね、桜井さん」
「そうでしょうそうでしょう!可愛くて魅力あふれる美少女ですよね!だから手を出したらもれなくぶっ飛ばしますんで肝に命じておいてください」
特にそこの紅林先輩、あなたです。と警告しておく。兵藤先輩と堀川先輩は大丈夫だと思うけど、油断は禁物だ。可愛い奈々は私が守る!!
「元気があってよろしい。さ、もう行かないと入学式に遅れてしまいますよ」
「「千鶴ーー!」」
「ほら呼ばれてんぜ」
「あ、わっごめん!じゃあすみません私も失礼します」
私と奈々の未来予想図に夢を馳せていると、先生や幼なじみの声で戻らされてしまった。慌てて駆け出す。
その前に、と半回転して彼らに向き合う。
怪訝な顔つきに向かって、満面の笑顔で。
「桜井千鶴、マネージャー希望です。楽しいサッカーを皆さんとしたいです。よろしくお願いします!」
恥ずかしさのあまり言い逃げしたのは許してほしい。
駆け抜けろ全力少女!
(後ろで見守る視線はとても優しいから)
「あーあ、奈々達とはクラス離れたか…」
席に着けば知らない顔ばかりで緊張する。幼なじみと離れたのは残念だけれど新しい出会いにわくわくする自分もいた。
やばい新生活早々ぼっちは回避しなければ。
頑張れ千鶴、海外で培ったコミュニケーション力をいつ発揮するの?
今でしょ!!
まずは隣の子から攻めるのよ!!
「おはよう、初めまして!桜井千鶴です。よろしくね!」
「!お、おはよう。僕は的場薫、こっちこそよろしく」
友達一号、ゲットだぜ!!
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