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「おはよう、お父さんお母さん」
着ていると言うよりは着られている感覚の真新しい制服。
仏壇の前に立って、二人に見せるようにくるりと一回転。
「似合う?江ノ高の制服も可愛いよね!奈々と見せ合いっこしたんだけど、やっぱり私の嫁は何着ても完璧だったよ!さすが私の奈々!」
「…千鶴」
「あ!聞いて!新しい制服見せた時、一青さんてば“…はっ背伸びし過ぎじゃねーの小学生”とか言ってきたんだよ!?失礼にも程があるだろあンのオッサンめ…!!」
「千鶴さーん?聞いてますかー」
「ていうか小学生って!今日からめでたく高校生ですけど!?悪かったなガキくさくて!」
「返事がない、ただの屍のようだ」
「誰がドラ○エかコルァァァァ!!…って、ゆ、祐介?」
「返事はあった、しかしただの馬鹿のようだ」
「オイコラもうそれ良いから。…え、何、何で拗ねてるの。
ていうかいつから居たの」
あまりに自然なやり取りで気付かなかった。
本当いつの間に入って来たんだ祐介。
確かに奴は私の家の合鍵を持ってるから入っていても不思議ではないんだけど。
そんな祐介は私の疑問を素晴らしくスルーして、両親の写真に両手を合わせた。
妙な雰囲気に居たたまれなさを感じて相手の様子を下手に伺う。
仲間内で拗ねると一番面倒なのは意外にも祐介だったりする。(ちなみに二番は傑だ)
「ゆ、ゆーたーん…」
「今日」
「はぁ」
「入学式、だろ」
「うん」
「俺たちもう、学校違うだろ」
「…うん」
「今日くらい、途中まで一緒に行かないか」
「ん、そうだね」
後ろ姿から一変して振り返った彼は、穏やかに微笑んで私を見た。
心臓が一瞬、おかしなリズムを刻んだ。
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