if〜もしも叶とくっついたら〜
※このお話は連載夢主のお相手が叶だったら・・・というif物語です。
本編とは全く関係のないパラレル話ですのでご理解下さい。
「えぇ!?響、三星学園の叶君と付き合ってるの!?」
「う、うん…千代、声がおっきいよ」
何処までも連なる雑草地帯に千代の可愛い声が透き通る。
けれどその内容に私は頬を染めて咎めた。
高校一年の冬。
仲の良い幼なじみだと思っていた叶修悟から告白を受けてもう半年になった。
その時から彼に対する気持ちに気付き、今に至る。
草刈りという肉体的にも精神的にもキツい仕事に少しでも負担を減らそうとガールズトークを始めたら、つい口が滑ってしまって千代を驚愕させた。
「ごめんごめん。でも辛くない?遠距離って…」
自分にはとても耐えられないとでも言う彼女に、汗を拭いながら答える。
「会えないのは寂しいけど、電話とかよくするし。それに…今週末、こっちに来てくれるんだ」
「それってもしや…デートかな響ちゃん?」
敢えて訊ねてくる千代に照れながらも、ピースで無言の肯定を返す。
「ラブラブだね〜羨ましいなぁ。でも良かった、楽しんでおいで!」
「っ千代大好きぃぃぃぃぃぃ!!」
「私も響が大好きだよ!」
優しい微笑みを浮かべ喜んでくれる彼女に抱きついて嬉しさを示す。
千代は本っ当女神様だ!
もうすぐやってくる日に想いを馳せ、有り余るエネルギーを使い、私は数々の仕事をこなしていった。
「ちーよー、ジャグの補給行ってくるねー!」
「え、さっきも響が行ってくれたじゃない。私がやるよ?」
「いーの!体動かしてないと落ち着かなくて…ダッシュで戻ってくるから!」
「あ、ちょっと響!
…本当に叶君とのデートが楽しみなんだなぁ。かわいいんだからもうっ!」
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遂に待ち望んだ当日。
電車で来る彼を迎えるために急ぎ足になる自分はつくづく単純だと思う。
改札口に着くと、見慣れた背格好が飛び込んできた。
高揚感を隠しきれず、悪戯心が湧いた私は忍び足で近づき、後ろから押してやろうと試みる。
(本当は目隠ししようとしたけど、身長的な問題で止めた)
しかし目標まで僅か数十センチのところで、私の期待は儚くも破られる事に。
「なーにしてんだ阿呆」
「いっひゃい…はんひぇふぁうぇひゃょ(痛い…何でばれたの)」
「バレるに決まってるだろ、背後から変なオーラ漂わせてれば」
「ひゃひおー」
寸での瞬間に振り向かれ、してやったり顔の彼、修悟は私のほっぺたを掴んで伸ばした。
てか痛いんですけど。地味に痛いんですけど!
「おー良く伸びるー。ふはっおま、変な顔…!」
「う゛ーっ!!(この猫目野郎!)」
企みが失敗した悔しさからつっけどんな返事をするが、上手く喋れなくては威力が半減する。
現に目の前の彼は肩を上げて笑い続けてるし。
「ひゃにゃへー!」
「わりわり。あっちゃー真っ赤だな」
「くっそ…朝っぱらからこんな仕打ちってありなのか」
「照れ隠しだって」
「どこに隠されてたの!?悪意しか感じられなかったけど!」
やっと痛みから解放された両頬は修の手に包まれたままだった。
また摘ままれるのではないかと懸念する私は少し身構える。
すると彼は唐突に、
「そういや久しぶり、響」
と破顔した。
「確かに会うのは久しぶりだね…って違う!何、何なのどうしたの修!?今日とてつもなく変だよ!」
その笑みに流されかけた己を叱咤して一気に詰め寄る。
原因は一体何だろうか、と必死に頭を回転させてもめぼしい答えは見つからない。
狼狽して意識が別世界に飛んでいる私を引き戻したのは彼の屈託ない一言。
「そうかも知んない。やっとお前に会えたから俺、情けないけど…緊張してる」
恥ずかしそうに髪をかき上げる仕草が、本音であると語る。
愛らしい言動にどきんと心臓が鳴った。
「電話やメールなら思ったこと直ぐに言えるのに…いざ本人を前にすると言葉が出てこないんだ」
「…私も、だよ」
添えられた彼の大きな手に擦り寄って同意する。
「私も同じ。今日を楽しみにし過ぎて一週間も前から落ち着けなかった」
離れている距離は、会えない時間は、人をこんなにも不安にするのだと初めて知った。
それに慣れていた為に相手と対面した時に身動きがとれなくなる。
恋は人を強くもさせるし、弱くもさせるとは良く言ったものだ。
「それでもさ、俺はこの時間が幸せだったりするよ」
紡がれた内容は急には理解し難くて彼を見上げる。
そして晴れ晴れとした眩しい笑顔が私を包んだ。
「会いたい時に会えない、このどうしようもなく寂しい気持ちって普通よりずっと強く俺らを繋いでくれてる。だからお前に触れられる瞬間は何倍もの幸せを感じるんだ」
昔からそう。
彼はいつだって私の一番欲しいものをくれる。
頬から伝わる温もりが体の強張りを解していった。
「…やっべ、修悟かっこよすぎ。惚れ直す」
「いい男だからな、俺」
「ばぁか…その通りだよ」
どちらともなく重ねた手は、指と指をしっかり絡めて互いの存在を確かめるように一つになった。
約一年ほど前は、ただ繋ぐだけだった大小二つの掌。
緩やかな変化にはにかむと、不意に彼が名前を呼んだ。
あ、キスされる。と思う間もなく落ちてきた感触に自ずと体温が上がる。
「んっ……こ、こら修!」
「へへ、顔赤いな」
「ひ、引っ張られたせいだしっ!」
そっぽを向いて先を歩くけれど、決して離そうとしない固い結び目に呆れて、しかしどこか喜びの表情で一歩を進めた。
幸福全線真っ盛り
(君が愛しくてたまらない)
○
ラブラブですね・・・泉くんとよりm(ry
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