僕らのfirst love〜三橋廉〜
オレがまだ小さかった時。
オレは夕方の人気がない公園で一人泣いていた。
修ちゃんと遊んでいたらうっかり転んでしまい、膝小僧に傷ができてしまった。
大人を呼びに行った修ちゃんはまだ帰ってこない。
心細さが痛みを倍増させてじわじわ広がる。
「うっ…いた…い…ッ!」
血が滲んで靴下を汚す。
ボロボロボロボロ涙が溢れても、誰も来てはくれない。
まるでこの世にひとりぼっちみたいな気がして、痛みも涙も止まることを知らない…。
―――誰か…、誰か!!
―――痛いよ、怖いよ…
「…どうしたの?ケガ、したの…?」
上から声がした。
しゃがんで丸めていた頭を上げると、オレと同い年位の女の子が心配そうにこっちを見ていた。
「擦りむいちゃったんだね、可哀想に…。
痛かったでしょ?ちょっと待ってて!」
顔をしかめて気遣いの言葉をくれた女の子は立ち上がり、その場を去った。
オレはあれよと言う間に変わっていく場面についていけず、ポカンとあの子の走っていった方向を見つめていた。
「お待たせっ!さ、足見せて?」
少し経ってから、駆け足で戻ってきた女の子に濡れたハンカチで治療をされる。
「…っっい、た!」
女の子が持っていたポーチから出された消毒液が傷口に滲みて、つい情けない涙声を吐いてしまう。
「ごめんね、痛いけどちょっと我慢して…」
申し訳なさそうに呟くその子に、オレは何も言えなくてとりあえずガマンすることに集中していた。
足に絆創膏を貼られて作業は終了した。
何故か少し痛みが引いた気がする。
「よし出来た!!よくガマンしたね、えらいえらい!」
頭をぽんぽんと優しく撫でられたが嫌じゃなかった。
その子の笑顔に安心して、また涙が流れる。
「あ、あり、あり、がとっ」
「ううん、ね、キミ野球好きなの?
いつもココに来てキャッチボールしてたでしょ。ずっと投げるところ見ててスゴいなーって思ってたんだ」
「う、ん!オレ、投げるの、大好きっ」
女の子の口から出た意外なキーワードに、オレは反射的に頷いた。
すると、
「本当!?私も野球好きなの!投げるのが一番大好き!おんなじだねっ!」
とても可愛い笑顔で答えてくれた。
その時オレの心臓はギューーッて苦しくなって、その子から目が離せなくなって。
「あ…私もう行かなきゃ」
・・・・・・もっと話したい
・・・・・・まだ、一緒にいたい―――
「じゃあね…」
「お、オレオレ、レンってゆうんだ!
キミ…はっ!?また明日、会える!?」
弾き出されたようにオレはその子に食らいついていた。
とにかく必死に喋った。
またあの子に会いたい…あの子のこと知りたい…!
ありったけを全て伝えると、女の子は一瞬驚いて真ん丸の目をパチクリさせた後、あのとろける表情で笑う。
「私は響!また明日ねレン!足お大事に!」
―――顔の至るところが熱い。自分でも分かるくらい真っ赤なことは気付かれていただろうか。
――――――その時はまだ知りえなかった気持ち―――
芽吹いた蕾
○修ちゃん編に続きます!
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