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―――そしてひとつの季節が

過ぎようとしていた…





「えー、みんな長いこと心配かけたけど、このとおり元気に復活しましたっ!」


笑顔で戻ってきた駆を取り囲み、胴上げで祝うクラスメイトたち。
その高さに、危ないんじゃ…と案じていた私の予想は当たってしまった。



ビターーンッ


「わわっ駆っ…」

「キャーー!駆ーーーっ」


人だかりから遠く外れた所で見ていた私は、冷めたため息を一つこぼすのだった。



**



駆が復帰しても、その姿はグラウンドにはいない。

皆は駆にまたサッカーをして欲しいみたいで色々言葉を掛けてはいるけど、私はどっち付かずをさまよっていた。


(だって、それじゃあ傑の二の舞な気がして怖い)


サッカーをやって当たり前、そのプレッシャーで彼は心を痛めていたのに。
恐怖観念に囚われた私は駆に話しかけることも躊躇われて、何となく避けていたのだ。


今も祐介が必死に駆を説得している場面に遭遇したけれど、慌てて校舎の影に隠れる始末。

彼らよりも前の方に居たため会話の内容までは聞こえないが、珍しく怒りを露呈する祐介が駆の背中にボールをぶつけたので驚いた。


「逃げるのかよっ!」


以前傑にも言われていたセリフは自分にもぶつけられたみたいで、ますます気持ちは沈む。

けれど駆が祐介の方を振り返った時、私は自分の目を疑った。





(―――傑…?)


駆から醸し出されているのは何者も寄せ付けない、強国の王者のような雰囲気。

それは私もよく知っているあの人独特のもので、寸の間息が詰まる。

一瞬だけれど駆と傑が重なり、思わず瞬きすると、幻影はすっかり消えていた。


「そんなんじゃない……オレは…


…僕は逃げてるんじゃない」


声の調子だけでも分かる駆の苛立ち。
びっくりする事が多すぎて、彼の一人称が変わっていたなんて気が付かなかった。

ボールを祐介に戻してこちらに歩いてくる駆から隠れるには手遅れになり、私は彼と鉢合わせしてしまう。


「!千鶴…」

「か、駆…これから検診?なら急がないとね、じゃ!」




「―――っ待って」


すぐさま走り去ろうとした足は最初の一歩すら踏めなかった。
私の腕を掴んだ彼は似合わない苦笑いを浮かべていた。


「ちょっと話さない?」






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