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「ったく千鶴ちゃんちっとも顔見せないから心配してたのよ!?ホラこれも持っていきなさい!」
「てゆーか千鶴姉ちゃんウチに住めばいいんじゃん?」
「えーと…色んな意味ですみません?あとおばさん、そんなに沢山持ち帰れませんから…!」
久し振りに逢沢家の敷居を跨いだ途端、挨拶もそこそこに女性陣のお説教を受ける私。
おばさんはどこの詰め放題かって位野菜や生活用品を袋詰めしてるし美都は腕に引っ付いてキュートな笑顔で大それた事言ってるし…!
二人の勢いに流石の傑も逆らえないらしくあっさり見放された。(あの野郎)
軽く突っ込んでみるものの、留まることを知らない彼女達は益々ヒートアップしていく。
「美都の言う通りよ、此処は千鶴ちゃんの家も同然なんだからいつだって帰ってきなさい!」
「千鶴姉ちゃんだって家族なんだから会えないと私寂しいんだよ!」
その言葉に込められた暖かい気持ちが全身に染み渡り、一気に胸を熱くさせる。
この家の人達に会うと自然と心が柔らかくなって、私が失ってしまったモノを覆ってくれる気がした。
自分の片親に良く似たおばさんの笑みは、やはり安心する。
「―――はい、…ありがとうございますっ」
昔から変わらない人柄を嬉しく思い、その気持ちを口にした。
その瞬間―――――
『逃げてばっかのてめーになにがわかる!!』
滅多に聞けない傑の怒声が響いて私達は身を固める。
美都と急いで居間に向かうと、呆然とした駆に掴みかかっている傑が目に飛び込んできた。
「あー!ちょっとスグ兄なにやってんの!?」
「待っ!傑、落ち着いてっ」
咄嗟に二人の間に割り込んだけれど一触即発の雰囲気は消えない。
こんなにキツい傑は見たことがなく、私は彼を押さえる事しか出来なかった。
「ふざけんな…いつからお前はそんなふうになっちまったんだよ」
「…すぐ、る!?」
やるせなく、悔しそうに吐き捨てると、彼は私の腕を掴んで背を向けてしまう。
哀感にも似た様子に、信じられないと言った表情を浮かべる駆。
何とか場を取りなそうと口を開くが―――
「たらいま〜お父様のお帰りなーのだ!!」
「……」
「はぁ〜」
「お、お帰りなさい。お邪魔してますおじさん…」
「あれ、千鶴ちゃん?てか子供たちよ、シースーだぞ」
タイミングが良いのか悪いのか、酔っぱらったおじさんによって危機は脱したようだった。
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