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今日の部活も無事終わり。

久々の再会を果たした奈々と積もる話でもしようと計画していたけれど、生憎買い物をしなければならなかったのを思い出して泣く泣くスーパーへ向かった。


「ふぅ…見切り品の偉大さには感服するなぁ」


明日の命を繋ぐ食料が入ったレジ袋を揺らしながら上機嫌で帰路を辿る。


その時突然ベルの軽い音が背後に当たった。


「、傑!」

「よ。買い物帰りか?千鶴」


目を凝らすと自転車に跨がった傑の姿が浮かび上がる。
傑は私の横に自転車を止めた。


「そうだよ、冷蔵庫がすっからかんでさぁ。値引きされてたから結構買っちゃった。傑は自主練?」

「ああ」

「お疲れさま!そんながんばり屋さんには飴をあげよう」


彼の真面目さに感心しつつ労いも込めて糖分補給用の飴を手渡す。(女の子はどこかしらにお菓子を持ってるんだよ!)
意外にも甘党な傑はほんの少し表情を緩めた。


「…サンキュ。それよりこんな夜遅くに一人で出歩くなよ、危ないだろ」

「えー、でも平日は夜しか買い物行けないし…」


戻った仏頂面を険しくさせる彼の忠告に力なく反論すると、いきなり手の重量感がなくなる。
その行方を追えば、重たい袋は自転車の前カゴにストンと収められていた。

そして彼は後方の荷台を指す。


「俺を呼べばいいだろ。
送っていくから乗れよ。むしろウチに来い」

「い、いいよそんなの!」


ありがたい誘いだけど、ただでさえ忙しい傑を自分の都合で振り回す訳にはいかない。
慌てて遠慮するも、彼はそれを見越していたらしくこう続けた。


「…千鶴、お前野菜ほしくないか?」

「欲しい。切実に。今みんな高いから」


何の脈絡もない質問は、私にとってとても重大だったためつい即答してしまった。
しかし答えた後の傑の笑みに、まんまと彼の策に嵌まったと気付く。


「最近知り合いから大量に分けてもらったんだ。うちじゃ食べきれないから貰ってくれると助かるんだけど」



私のなけなしのプライドと傑の好意。

どちらを選ぶかなんてとっくに決まっている。



「……お願い、します」


節約の為だ、と自分に何度も言い聞かせて大人しく荷台へ座った。




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