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奈々と同じクラスになれたらいいね
そうねうふふあはは

なーんて会話をしたのはつい昨日だったか


「(同じクラスになれますようになれますように)」

「千鶴…オーラが怖い」

「うっさい黙って祐介集中できない」


願望を実現するために出来るのは祈るだけだ、と担任の先生が入って来るまでずっと神頼みしていたらあまりの真剣さに隣の祐介が指摘する。
が、私はそれを一蹴した。


刻々と近づく運命の瞬間に心臓はどくどく鳴り続けている。


そして――――


ガラッと開かれた扉から覗く先生は普段の倍機嫌が良く、私は期待に胸を膨らませた。


同じように感じ取ったクラスメイトも口を閉じて彼の言葉を待つ。
静かな音を立てた扉によって、眼鏡を光らせ得意気に語る教師は完全にアウトオブ眼中だった。


「えー転校生を紹介する。
美島奈々くんだ」


軽やかな足取りで入って来たのは見目麗しい美少女。
彼女は誰もが見惚れる微笑みを浮かべながら鈴のような声音を響かせた。


「美島です。ヨロシク」


途端に男子の歓声が沸き上がり教室を震わせた。


「やったぁーっ桜井さんに続いて美女が来たー!」

「天使だ…天使が舞い降りた!」

「癒される〜っ」


私は続々と出てくる奈々への賛辞に大きく頷いて同意する。(何か若干おかしい言葉もあった気がするが)


「うんうん皆もっと奈々を褒めて讃えて!」

「知り合いか?千鶴」

「知り合いどころか大親友だよ!昔同じチームでコンビ組んでたこともあるんだー」

「へぇ…」


独り言を拾った隣の祐介に元気良く返事をすると、祐介は奈々を一瞥した。


「昔から可愛かったんだけど今はもっと綺麗になってさぁー!
流石私の奈々!超可愛い!
ね、祐介見とれちゃった?」

「や、俺は別に…」

「…は?あり得ない奈々みたいな絶世の美女にときめかないなんてどうかしてる!」

「あのなぁ。好みは人それぞれだろ?確かに美人だとは思うけど、俺は…」


「あ、でも奈々は私のだから惚れちゃダメ」

「…お前は俺にどうしてほしいんだ」


親バカならぬ友バカと言うべきか。
矛盾しまくりの私に祐介は額を押さえて呆れている。
自分でも自覚しているのだけど、こればかりは中々治せないのだ。


「あっはは…。でも私にとって本当に大事な親友だからさ」

「……」

「って何か怒って、る?」


「はぁ…、ちぃのバーカ」

「なっ!?そりゃ馬鹿ですが何で今!?」


丁度視線が合った奈々へ最大級の笑顔を向けながら弁解すると、隣の彼は表情ではなく纏うオーラを不機嫌にしていた。

不思議な反応に思わず尋ねるが、横目で見たかと思いきや抑揚のない声で貶されてしまった。

反射的に抗議したけど、祐介は顔を背けたまま応じてはくれない。


「?変な祐介ー…」


そのまま追及を諦めた私は微塵も知らなかったのだ。





「(女子に嫉妬した、とか言えないだろ普通…)」


長い髪で隠れている祐介の耳がほんのり色付いていたことには。



(…あれ、そういえば今さり気無くあだ名だった?)
(しかもついあだ名で呼んじまったし…!どんだけ独占欲強いんだ俺…)






「ちょっ何でもいいからお願い助けて祐介、千鶴ーーーーー!!!!」


―――ちなみにクラスの男子達からリンチされていた駆にも気付かなかったのは言うまでもあるまい。




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