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洗濯機を回しながらグラウンドを眺めていると、いつも以上に皆の空気がピリピリしているのが分かる。

それも明日のレギュラー選考のせいだろう。

同じクラスの三人組はコート外でわいわいやっている。
……あ、公太が一年女子マネにセクハラしようとしてフルぼっこに…。


自業自得な公太はさておき、必然的に二人になった駆と祐介は何かを話しているけどあまり良い雰囲気ではなさそうだ。

祐介はことある毎に駆を説得している。
傑以外で一番駆の実力を認めてるのは祐介だから、納得出来てない気持ちが大きいのかもしれない。


駆がマネージャー宣言をしてから、その笑顔は嘘くさいものへと変わった。
今も祐介へ笑いかける表情は私の知ってる駆の笑顔ではない。

交代に呼ばれてピッチへ行く祐介を見送る瞳は憂いを帯びていて、私も知らずの内に顔をしかめていた。



「うーん、上手くいかないもんだなぁ…」


最近増えた溜め息の回数に自嘲気味になっていると、交代した祐介が股抜きからの鮮やかなシュートを決めていた。


「お、ナーイッシュ!」


傑とタッチを交わした祐介がふとこちらに気付いたので親指を立てて笑うと同じように返してくれた。
…駆もこうしてゴールを入れる姿の方が絶対似合ってるのになぁ。
しかし肝心の駆は立ち上がり親友の活躍を喜んでいる。

(それは駆のいいトコでもあるんだけど)


その瞬間、視界の端に映った光景に違和感を抱きもう一度確認する。
呆れている公太と言い争う彼に近づく人物を認めて私はハッとし、我も忘れて走りだした。





校門を出ようとするセーラー服の彼女を大声で呼ぶ。


「―――奈々っ!!」

振り返った少女に思い切り抱きつくと、懐かしくて甘い香りがした。
咎めもせずクスクス笑う彼女は優しく髪を撫でてくれる。


「久しぶり、千鶴。これじゃ顔が見えないわ」

言われてゆっくり上を向くと、前にアメリカで会った時よりずっと大人っぽく成長した幼馴染みの姿があった。


「な、奈々だぁ…本物の奈々だぁぁぁぁぁ」

「何よ、メールしてたじゃない」

「実際会うのと会わないのじゃ全然違うよ〜会いたかったよぉぉぉおっ」


微笑む大親友と対面した事実が予想外に感激を生んで、涙が零れそうになるのを留める。


「はいはい泣かないの。
それより駆、本当にマネージャーになったのね」

「…奈々はどう思う?駆のこと…」


深刻な顔つきになった奈々の言葉に私も真面目になった。
恐る恐る意見を伺うと、彼女は清々しく言い放つ。


「未練の塊よ。本当はサッカーがしたいって顔に出まくりだもの」

「だよね…。でも当人が否定するからどうにも」


私が肩を竦めると、奈々は何かを企んでいるみたいに唇で弧を作った。(ほんっと美人になったなぁ)


「あのね千鶴、聞いてくれる?」


そして私は驚くべき作戦を耳にする――――




ウィッチィの謀計
(魔女は強し)


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