Fw:本文「君の一票」佐伯


 朱い夕焼けの色。鮮やかなオレンジ色が海と交わり、闇に溶けようとする。

 (やっぱりここか)

 冬の砂浜。裸足で追いかけるボール。いつ来ても楽しい。

「佐伯君、久しぶりね」
「美島さん。県予選以来かな」
「こうやって話すのは夏以来だね」
「そうだな」

 道端に自転車を止めていると外部へと出て行った中学の同級生がいた。

「あ、佐伯!奈々ちゃん抱きしめ……ぐほぅっ!!」
「相変わらずだな、中塚」

 公太に裏拳を見舞い、地面へ埋めた美島さんとの二人のやりとりに苦笑していると、他の部員も気づいたようで怪訝な顔をした。確かにオレは歓迎されない。他校の密偵と思われたんだろうな。そんなつもりは少しもないが、仕方がないことだ。冬の選手権もとうに終わり、新体制へとどこも忙しいのだ。

「祐介!」

 名前を呼ばれて片手をあげた。わざわざ江ノ島へ足を伸ばすからには理由がある。

「どうしたの?」
「家に行ったらおばさんから部活だと聞いたんだ。ここにいてくれてよかったよ」

 さすがに門は入れない。

「これを見せに来たんだ」

 放課後の放送室で鷹匠さんが姉さんに仕掛けたいたずら。世良の不機嫌な理由。
 不思議そうな表情の駆に渡した雑誌の付箋をつけたページを開かせると、なるほどと感嘆の声があがった。

「祐介すごいじゃん!」
「そんなことないよ」

 鷹匠さんと姉といい、世良といい。今日は本当に疲れた。今日はすべてこの雑誌なんだから。

「よっ!久しぶり」
「お久しぶりです。荒木さんもどうぞ」

 雑誌を回していけば、阿鼻叫喚。あれ、世良もそうだったけど、荒木さんもだめだった。司令塔はプライドでもあるのかな。

「祐介、すごいね。鷹匠さんと並んでる!」
「飛鳥さんと一票違いだね」

 荒木さんと今も地面に突き刺さった状態で埋められている中塚はほっとく。なにやら他の部員が荒木さんに励ましているのか蹴落としているのかよくわからないじゃれ合いだ。

「2人だってランクインしてる」
「えーでも」
「##NAME2##さんって知ってるだろ?」

 あー記者の?という声にうなづいた。高校サッカーの神奈川版が担当の馴染みの記者だ。

「その##NAME2##さんが、ピックアップしただけでだって。それで」

 それで。ランクインの2人に2人の得票数を見せたかったんじゃない。本当に見せたかったのは……。

「オレ、傑さんに入れた」
「同じだね」
「……私も」

 3人で笑いあった。一緒にやってきた時間は違う。けれども、大好きで尊敬する先輩だ。亡くしたはじめは寂しくて仕方がなかったけど、今はもう後ろ姿を追えなくなっても大丈夫だ。いつまでも追いつけなくても、それでいい。オレは傑さんから学んだことはオレたちのサッカーの中にあるし、この先の未来へとつなげていく。そう決めた。








 別々のチームになったって。ずっと続いていくんだよな。
 サッカーも。友情も。




(((同じ一つの夢を見る)))



(一票の在処)
(ホントはね。駆に入れたのよ私)
(まだ知られたくないわ)


――――――――――



最後は傑さんを通じてサッカーと男の友情。
やっぱ江ノ島は背景ログアウトだ……実力がなくてごめんなさい。


さて最後のモノローグは誰でしょう!!
いやーばればれですが、心の中にしまってください後生ですから!!!
裏ネタだからね☆



それでは最後まで(長すぎる)文章につきあっていただき本当にありがとうございました。

もっと上手に書きたい……初コラボだねー。

夏ちゃんに初企画祝いを捧げます。



スピンオフも全力で!!の蒼碧でした。
2011/6/26




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